令和6年版 消防白書

3.特定事業所における防災体制

(1)自衛防災組織等の設置

石油コンビナート等災害防止法では、特定事業者に対し、自衛防災組織の設置、防災資機材等の整備、防災管理者の選任、防災規程の策定等を義務付けている。また、共同防災組織*3、広域共同防災組織*4及び石油コンビナート等特別防災区域協議会*5(以下、本節において「区域協議会」という。)の設置について規定している。
令和6年4月1日現在、全ての特定事業所(642事業所)に自衛防災組織が置かれ、70の共同防災組織、11の広域共同防災組織及び56の区域協議会が設置されている。これらの自衛防災組織、共同防災組織及び広域共同防災組織には防災要員が配置され、大型化学消防車75台、大型高所放水車31台、泡原液搬送車122台、大型化学高所放水車117台、大容量泡放水砲24基、油回収船20隻等が整備されている(資料1-3-5)。

(2)大容量泡放射システムの配備

大容量泡放射システムは、浮き屋根式屋外貯蔵タンクの全面火災に対応するため、毎分1万リットル以上の放水能力を有する大容量泡放水砲、送水ポンプ、泡混合装置、ホース等で構成され、大容量泡放水砲1基当たり、従来の3点セット(大型化学消防車、大型高所放水車及び泡原液搬送車)の最大10倍程度の泡放射を行うことができるものである。
現在、毎分1万リットルから4万リットルの放水能力を有する大容量泡放射システムが、全国で12の広域共同防災組織等に配備されている。

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大容量泡放射システム

(3)自衛防災体制の充実

消防庁では、「自衛防災組織等の防災要員のための標準的な教育テキスト」として、防災要員の教育訓練において、視覚的に分かりやすいテキストを作成し、災害発生時の初動対応、公設消防との連携等、防災要員として必要な知識や技術を身につけるに当たり、新任者だけでなく経験者へも活用できる研修モデルを提案し、防災体制の強化を図っている。

*3 共同防災組織:一の特別防災区域に所在する特定事業所に係る特定事業者が、共同して自衛防災組織の業務の一部を行うために設置する防災組織
*4 広域共同防災組織:二以上の特別防災区域にわたる区域に所在する特定事業所に係る特定事業者が、共同して大容量泡放水砲等を用いて行う防災活動に関する業務を行うために設置する広域的な共同防災組織
*5 石油コンビナート等特別防災区域協議会:一の特別防災区域に所在する特定事業所に係る特定事業者が、共同して災害発生防止等に関する自主基準の作成や共同防災訓練等を実施することを目的に設置する協議会

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