令和6年版 消防白書

震災対策の現況と課題

1.地震災害の予防

周囲をプレートに囲まれ、多数の活断層を有する我が国において地震災害の被害を最小限に抑制するため、大規模地震対策特別措置法のほか、南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法、首都直下地震対策特別措置法及び日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法では、地域指定の対象とされた地方公共団体による、地震防災上緊急に整備すべき施設や訓練等に関する計画の作成について定められている。
また、令和3年3月に改正され、国の負担又は補助の特例等に係る規定の失効期日が5年延長された地震防災対策特別措置法に基づき、都道府県においては、管内市町村事業も含む地震防災緊急事業五箇年計画を作成できることとされている(第1-6-4表)。
地方公共団体においては、これらの計画に基づき、公共施設の耐震化等の施設整備や、住民参加の防災訓練等の災害予防の取組が求められる。
こうした取組を支援できるよう、施設整備について財政措置を講じるとともに、関係府省庁との連携による緊急地震速報訓練の実施や、きめ細かな地震観測網構築のための震度情報ネットワークの整備など、可能な限りの災害予防に向けて引き続き取り組む。

第1-6-4表 大規模地震対策の概要

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(1)防災拠点となる公共施設等の耐震化の促進

大規模地震発生時において災害応急対策を円滑に実施するためには、自治体庁舎や指定避難所等の防災拠点となる公共施設等の耐震化が重要であることから、消防庁では、これらの施設の耐震化を地方公共団体に要請している。
防災拠点となる公共施設等の耐震化の割合は、令和4年10月1日現在で第1-6-5表のとおりである。

第1-6-5表 防災拠点となる公共施設等の耐震率

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(※)機動隊庁舎、警察学校、交番等を含む。


(2)防災拠点となる公共施設等の耐震化に係る地方財政措置

地方公共団体の防災拠点となる公共施設等の耐震化について緊急防災・減災事業債の対象としている。さらに、令和3年8月からは、地方公共団体の未耐震の本庁舎の建替に併せて行う災害対策本部員室等の整備についても、同事業債の充当が可能となった。

(3)地震防災緊急事業五箇年計画等に基づく施設整備

地方公共団体は、地震防災対策特別措置法に基づく第6次地震防災緊急事業五箇年計画(令和3年度から令和7年度まで)に基づき施設整備を推進しており、消防庁は、消防庁所管事業に係る計画変更等について助言を行った。
また、同計画等に基づき地方公共団体が整備する耐震性貯水槽について、消防庁では消防防災施設整備費補助金による国庫補助事業を行っており、令和5年度には同補助金により189基の整備が行われた。

(4)震度情報ネットワークシステムの整備

地震発生時の初動対応を迅速に行うため、地方公共団体が整備した約2,900か所の震度計が計測する震度情報を消防庁や気象庁に即時送信する震度情報ネットワークシステム(第1-6-1図)が運用されている。
消防庁では、安定的かつきめ細かな震度観測、観測データの確実な伝達ができるよう、令和3年度補正予算において都道府県に対する補助事業を実施し、震度計を更新するとともに、波形データの保存容量の拡充・伝送の自動化、ネットワークの光回線化による伝送データの大容量化等を行い、ネットワーク全体の機能強化を図った。

第1-6-1図 震度情報ネットワークシステムの概要

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(5)緊急地震速報訓練の実施

消防庁では、気象庁等と連携し、年2回、緊急地震速報の全国的な訓練を実施している。令和6年度は第1回を6月20日、第2回を11月5日に実施し、地方公共団体では、全国瞬時警報システム(Jアラート)により配信する訓練用の緊急地震速報の受信確認、職員・地域住民参加による地震の揺れから身を守る行動や避難行動の訓練等が行われた。

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