令和6年版 消防白書

原子力災害対策等の課題

1.福島原発事故を踏まえた今後の取組

(1)避難指示区域の管轄消防本部の支援

避難指示区域の管轄消防本部においては、放射性物質による汚染、消防施設や水利の被災等の厳しい条件の下、消防活動を継続して行っているところであり、各市町村の復旧・復興等と併せて体制の充実強化を図る必要がある。消防庁としては、関係省庁等と連携し、管轄消防本部への支援を引き続き行っていく必要がある。

(2)関係地方公共団体における地域防災計画の見直し等

関係地方公共団体においては、原子力防災全体の見直しと併せ、地域防災計画・避難計画の見直しが進められているところである。福島原発事故以前における防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲の目安は、原子力発電所にあってはおおむね半径8~10kmとされていたが、福島原発事故以後に策定された原子力災害対策指針では重点的に原子力災害に特有な対策が講じられる区域(原子力災害対策重点区域)の範囲の目安としておおむね半径30kmに拡大された。このため、原子力災害対策指針策定後に新たに当該区域の圏内となった地方公共団体の地域防災計画・避難計画において原子力災害対策を定めること、広域での避難体制を確保すること等が求められている。
消防庁では、関係省庁と連携し、地域防災計画・避難計画の充実に向けた必要な支援や、訓練等を通じた防災体制の充実強化を支援しているところであり、今後ともこれらの取組を通じて、原子力防災体制の充実強化を図っていく必要がある。

(3)福島原発事故において活動した消防職員の長期的な健康管理

消防庁では、福島原発事故において、国の要請により緊急消防援助隊として3号機の使用済燃料プールへの放水活動等を実施した消防職員に対し、定期追加検査の機会の確保及び長期的経過観察により健康管理の支援を行っており、引き続き支援を実施していく必要がある。

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