1.避難

 地震、津波、洪水、土砂災害、そして火災などの危険が迫った時、あなたならどうしますか?危険が迫った時の避難行動は、あなただけでなく、あなたの家族や近所の方々を救う大切な手段です。これから、災害が起こった時の避難のポイントを見ていきましょう。
避難の一般的な注意点としては、次のような点が挙げられます。

まず念頭に置いていただきたいことは、「早めの避難」です。私たち人間は、危険が迫るぎりぎりまで自分は大丈夫だという気持ちを持ちがちです。その結果が「逃げ遅れ」につながります。「空振りで幸い」という気持ちで、早めに避難することが大切です。

2つ目は「正しい情報による避難」です。避難の際、情報は大変重要なものです。多様な手段から正しい情報を入手して、落ち着いて避難しましょう。

3つ目は「徒歩による避難」です。車での避難には、水に流されたり、浸水した車から脱出できなかったりといったさまざまな危険が潜んでいます。原則として徒歩で避難しましょう。

4つ目は「避難の際の隣近所への声掛け」です。自分が危険を察知しても、隣近所の方が気づいていないことも考えられます。避難の際は、大きな声で避難を呼び掛けましょう。その際、お年寄りや身体の不自由な人など自力で避難することが難しい人がいたら、可能な限り避難の手助けをしましょう。

5つ目は「普段から避難場所、避難経路を知っておくこと」です。避難しなければならない状況に、いつ遭遇するかわかりません。その時になって慌てないように、普段から避難場所や避難経路を家族で確認しておきましょう。

この5つの一般的な注意点を基本に、みなさんがお住まいの場所での避難について、もう一度見直してみましょう。

 次に、津波からの避難について見てみましょう。海の近くで大きな揺れを感じたら、とにかく逃げましょう。津波と競争しても勝てません。津波が来る前に逃げなければいけないのです。時には、大きな揺れを伴わない津波もあります。揺れを感じたら、小さな揺れでもラジオやテレビなどからの情報に注意し、津波警報などが発表されたら、火の元を確認し、すぐに逃げましょう。逃げる場所も問題です。あらかじめ指定された避難場所があれば、そこに逃げましょう。旅先で避難場所を知らない場合は、高台に逃げましょう。高台が無く、近くの津波避難タワーの場所もわからない時は、少しでも助かる可能性を高めるため、出来るだけ高い鉄筋コンクリートの建物に逃げましょう。

運転中に地震が起きた場合は、車を道路の左側に寄せて停車させ、キーを差したままロックをせずに高台などに歩いて逃げましょう。いつ家にもどれるのでしょうか。津波は何回も押し寄せます。一度水が引いたときに忘れ物を取りにもどると、次の津波に襲われるおそれがあります。絶対にやめましょう。
津波警報・ 注意報が解除されるまで、半日程度は避難場所にとどまることを覚悟しておいてください。

なお、海上で地震に遭遇した場合の対応方法については、国土交通省が作成している、「船舶運航事業者における津波避難マニュアル作成の手引き」に詳しく書かれているので御覧ください。

 次に、大雨による洪⽔からの避難のポイントを見ていきましょう。

原則は、浸水する前に避難することです。浸水してからの避難はさまざまな危険があります。
自治体などからの情報に注意して早めの避難を心がけてください。特に、自治体から避難指示が出された場合はためらわずに避難しましょう。自治体からの情報がない場合でも、住んでいる場所の条件などによって危険となる場合がありますので、危険を感じたらすぐに避難します。特に子どもやお年寄り、体の不自由な人がいる場合は早めに避難しておきます。避難するときは、紐で締められるなど、脱げにくく歩きやすいものを履いて外へ出ます。

氾濫した水の流れは、勢いが強いので水深が膝程度あると大人でも歩くのが困難になります。緊急安全確保として、高い堅牢な建物にとどまることも選択の一つです。氾濫した水は、茶色く濁っており、水路と道路の境や、ふたが空いているマンホールの穴は見えません。他のルートでの避難や自宅などの浸水しない場所に留まることを検討しましょう。

ところで、避難というと、「車で逃げる」ことを思い浮かべる⼈も多いかもしれません。しかし、車での避難には移動中に洪水等に見舞われることや、渋滞を発生させるおそれがあることを覚えておいてください。

2009年の台風9号による大雨により、兵庫県佐用町では、8名が車で移動中に犠牲又は行方不明となりました。
安全が確認されて、自宅に戻ってきたときは、家の安全を確認しましょう。特に断線した電線がないか、電線が家に触れていないかなどを調べ、このような事案があればすぐに電力会社に通報します。近所にも知らせ、電線に触れないように注意しましょう。自分で勝手に始末をしてはいけません。

 次に土砂災害です。

土砂災害の危険箇所付近にお住まいの方にとって、天気予報で、土砂災害の危険が迫っていると注意の呼びかけを聞いたときは大事なタイミングです。何の異常を感じなくても、「念のため避難しておく」この心構えが命を救います。
一般的な土砂災害の前兆現象を見ていきましょう。崖や地面にひび割れができ、斜面から水が湧き出る。井戸や川の水が濁ったり、湧き水が止まる。小石がバラバラと落ちてくる。地鳴り・山鳴りがする。降雨が続くのに川の水位が下がる。樹木が傾いたり、立木が裂ける音や石がぶつかり合う音が聞こえる。

ただし、いつも前兆現象があるとは限りません。前兆現象を知った段階では、すでに危機が目の前に迫っています。土砂災害は瞬時に起きます。少しでも普段と変わった現象を発見したら、無駄になろうとも素早い避難が必要です。
なお、この段階での避難では間に合わない可能性があることも理解しておいてください。

 次に火災からの避難です。

天井に火が燃え移ったら、消火器での消火は困難です。すみやかに避難してください。服装や持ち物にこだわらず、できるだけ早く避難しましょう。火災でこわいのは煙による中毒死、窒息死などです。煙は一酸化炭素などの有害ガスを含んでいます。服などに火が燃え移って焼死するよりも、煙を吸い込んで意識がなくなって死亡することが大変多くなっています。

熱せられた煙はあっという間に部屋中に充満します。煙の中を逃げる時は、できるだけ姿勢を低くします。濡れタオルやハンカチで口をふさいで、煙を吸い込まないようにします。避難する時は、空気を遮断して炎の勢いを押さえるため、特にマンション等は出入り口のドアを閉めましょう。

デパート、旅館、ホテルなどで火災にあったら、避難階段を使用して避難しましょう。エレベーターでの避難は危険です。非常口や避難経路を確認する習慣をつけましょう。火災が起きたときは、非常放送や係員の指示を聞いて落ち着いて行動しましょう。

 災害はいつ起こるかわかりません。あなたとあなたの大切な人の命を守るためにも、平時からハザードマップで自分が住む地域の災害リスクを認識するなど、自分の周りにどのような災害の危険が及ぶのかイメージを持ち、その被害をできるだけ少なくするための対策を講じることが重要です。早めの避難が命を救います。災害を正しく恐れ、早めに安全に避難することができるよう、日頃から避難に備えて準備しましょう。

チャプター

  • 1.避難