1.初期消火

 火災は自らの力で防ぐことの出来る災害です。起こさないことが一番ですが、「ついうっかり」や放火などで被害に見舞われるかもしれません。
火災は小さなうちに消火することが大切です。あわてず、適切に初期消火を行うことができるよう知識を身につけましょう。

 火災に見舞われた場合に備えて、消火器を準備しましょう。消火器には「業務用」、「住宅用」といった表示があります。ご家庭で消火器を備える場合は、一般家庭で起こりえる火災の多くに対応できるABC粉末消火器が適切です。住宅用消火器には火災の種類に応じて、適応火災が絵で表示されています。

その他にも、強化液消火器、エアゾール式簡易消火具などがありますので、使用場所や使用目的に応じて最適な消火器を選びましょう。
住宅用消火器は小型軽量で使い方も簡単になっています。業務用消火器よりも小さく軽くなっており、ホースが付いてないタイプも多くあります。業務用消火器よりも消火剤の量が少ないので、火炎の高さが小さい場合に有効です。

本体に使用期限などが表示してありますので、定期的に確認しましょう。

 次に消火器の使い方を見てみましょう。消火器は、火災の起きている場所の近くまでは片手または両手で搬送し、消火に安全な場所、概ね7、8メートルまで近づきます。そこで操作をしないと運んでいる間に誤射し、火災現場に到着した時には、放射し終わってしまうこともあります。消火器が重く、片手で運べない人は、両手で抱えるように搬送し、障害物にぶつけないよう気をつけて運びます。

消火器の使い方は、最初に黄色の安全ピンを引き抜きます。次にホースを外し火元に向けます。ホースは、先端を持ちましょう。ホースの途中を持つとホースの圧力などからねらいが定まらず、的確な場所に放射できない恐れがあります。そしてレバーを強く握って放射します。消火器が重いときは、消火器を置いたままレバーを握って放射する方法もあります。放射の際は、火の根元をねらって、手前からほうきで掃くように消火剤を放射して下さい。消火剤を効果的に放射するため、また、自分の身を守るために消火器は風上から放射します。

室内においては、逃げ道を確保し、出入り口を背に放射します。

放射時間や放射距離は、本体に必ず表示してありますので確認しておくと良いでしょう。

一般的に、消火器での初期消火が可能なのは、炎がどれくらいになったときといわれているかご存知ですか。一般に初期消火が可能なのは、天井に火がまわるまでと言われています。天井に火が燃え移ったら速やかに逃げて下さい。特にマンションでは空気を遮断して炎の勢いを押さえるためドアを閉めて下さい。

また、大声で周りの人に火災であることを知らせることも大切です。

一人での消火活動を考えずみんなで協力することも大切です。

消火器の使い方を、住宅火災の主要な原因の1つである「天ぷら油火災」を例に見てみましょう。天ぷら油火災では、消火器を放射する距離が近づきすぎると放射薬剤の勢いで油が飛び散る場合もあり、火傷などの危険があります。4~5メートル程度離れたところから放射し、徐々に近づいて下さい。

粉末消火器は、冷却効果が少ないので再燃する恐れがあります。消火剤はすべて放射して下さい。その後、コンロを消した後でも蓋などをして空気の遮断を続けて下さい。

また、住宅用消火器やエアゾール式簡易消火具も、少し離れて放射しても十分に効果があります。強化液消火器は、天ぷら油火災には特に効果があり、再燃の防止にもなります。

消火器がない場合、鍋の蓋があれば、それを被せて消火します。火傷に注意するため手などをタオルで保護して被せます。その後、ガスの栓を締めます。

シーツを使った消火も有効です。シーツは、濡らしてゆるく絞り、手前から手を隠しながら覆うように被せます。その後、ガスの栓を締めます。

水をかけるのは絶対にやめましょう。油が飛び散り火炎が広がり、火傷の恐れもあります。

使用期限は、過ぎていませんか。安全ピンは付いていますか。キャップはゆるんでいませんか。容器にサビや変形などはありませんか。ホースに詰まりやヒビ割れはありませんか。圧力ゲージのついているものは、圧力を示す針が規定値内にありますか。

せっかく備えた消火器もサビや損傷などの異常が生じるといざという時使えなかったり、本体が破裂して思わぬ怪我をすることがあります。異常を発見した場合は、絶対に使用しないで下さい。

異常が認められた消火器や不要になった消火器の点検や処分については、購入したお店又は消火器メーカーなどにお問い合わせ下さい。

設置場所は、誰もが見やすく、取り出しやすい場所におきましょう。例えば、人目につきやすい玄関、階段近くの邪魔にならないところや踊り場、居間や寝室の目につきやすいところ、台所の入口など火の気の近いところなどです。

なお、風呂場、洗面所などの湿気の多い所は避けましょう。

 バケツリレーは、複数の人が列を作り、水の入ったバケツをとなりの人につぎつぎと渡していき、火元に連続して水をかける消火方法です。

バケツリレーのチームを作ります。人数に余裕があれば水の入っているバケツを運ぶ班と空のバケツを運ぶ班を作ります。

水の入ったバケツの持ち方は、バケツの取手の上を両手で持つ者と、バケツの取手の下を両手で持つ者が交互に並び、手がぶつかり合わないようにして手渡すと効率的に運ぶことができます。
バケツに入れる水の量は、重さやこぼれることを考えると5、6分程度がいいでしょう。

人は、背中あわせに二列に並びバケツを中継します。風上から近寄り、火から2~3m離れて注水位置を決めます。反動をつけ遠くまで飛ばし、火の勢いを抑えるように注水します。

「住宅用スプリンクラー」
火災による熱、煙又は炎を感知して、水又は消火剤を自動的に放射します。
一定温度になるとプロテクター(保護キャップ)が落下して警報を出し、更に温度が上昇すると放射するタイプもあります。

「住宅用自動消火装置」
自動的に火災の発生を感知し、スプリンクラー状に消火する設備です。配管の必要がなく、3リットル程度の消火剤が装置の中に入っており、火災を感知して自動的に放射します。

「天ぷら油消火用簡易装置」
コンロの上から自動放射します。熱を感知して消化剤を自動的に放射しコンロからの火災を消火するものです。

 消火栓の種類を見てみましょう。
消火栓には主に、1号消火栓、易操作性1号消火栓、2号消火栓があり、それぞれ消火能力や操作方法に違いがあります。易操作性1号消火栓と2号消火栓には扉にこのようなステッカーが貼られており、「1人で操作できる」ことを表しています。

1号消火栓の使い方を学びましょう。

1号消火栓は、必ず2人以上で操作を行います。ホース1本の長さは、15メートルで2本収容してあることから、30メートルの長さになります。火元に近くて延焼の危険がない消火栓を選びましょう。

まず、起動ボタンを押します。起動ボタンを押すとポンプが起動し、火災を知らせる警報ベルも鳴動します。次に扉を開けます。中のホースを絡まないようフックから外して取り出します。わきの下にノズルとホースを抱え、火元に向かいます。ノズルが下になりホースが上に来るようしっかりと脇の下に抱え、上からホースが順序良く落ちていくとスムーズなホースの延長が行えます。ホースにゆとりを持ってホースを延長します。もう一人は、ホースの延長の際、ホースを腰にあてホースのゆとりを取ります。

ホースの延長後、火元に向けて構え、消火栓ボックスで待機しているもう一人の人に「放水はじめ」の合図を送ります。「放水はじめ」の合図でバルブを開け、送水します。送水を確認した後は、ホースの折れ曲がりなどを確認しながらホースの先に向かい、筒先を持っている人の補助を行います。

易操作性1号消火栓について、説明します。

易操作性1号消火栓は、一人でも操作できるよう改良されたものです。

最初に、起動ボタンがある場合は、起動ボタンを押し、扉を開きます。ノズルを取り出します。次に、開閉バルブを開けます。開閉バルブを開けると自動的にポンプが起動するタイプもあります。

火元に到着すると筒先を回して、放水します。

次に2号消火栓について説明します。

まず、扉を開けます。ノズルを外すことで、リミットスイッチがONになり、ポンプが起動します。中にある消火栓開閉弁を開きます。ノズルをもって火元に向かいます。筒先のノズル開閉弁を開き放水します。

 火災は初期の段階で消火できれば大きな被害の発生を防ぐことができます。いざという時に落ち着いて行動できるよう、消火器などの取り扱い方を確認しておきましょう。

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