平成20年版 消防白書

[火災予防行政の課題]

1 法令適合の確保

平成14年の消防法の一部改正等を受けて、全国の消防機関において「立入検査マニュアル」及び「違反処理マニュアル」を活用した違反是正指導が進捗した結果、小規模雑居ビルをはじめとする防火対象物に対する違反是正の推進に一定の成果が得られた。しかし、平成19年1月20日に発生した兵庫県宝塚市のカラオケボックスでの火災後に実施した実態調査の結果でも、当初70.3%の施設において何らかの消防法令違反がみられ、平成19年12月のフォローアップ調査時には29.0%まで是正されたが、その是正状況には地域差が見られるなど、引き続き違反是正の推進に努める必要がある。
このためには、管内における火災危険性の高い防火対象物を的確に把握し、その安全対策の不備等を適切に是正することなど、立入検査及び違反処理の戦略的な実施等をはじめ、違反処理データベースの充実、違反是正推進連絡会を活用した消防機関相互の協力体制の活用、消防本部単位ではなく、より広域的に連携した違反是正の取組等による体制の強化等が必要である。
また、防火管理制度は、防火対象物の関係者自らが火災を予防し、火災又は地震等による被害を軽減するために、防火管理者を中心とした火災予防体制を構築し、消防計画の作成や消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練など防火管理上必要な業務を行うことを主とした制度であり、これにより関係者が自ら法令適合の確保や防火安全の向上に取り組むことが重要であるが、防火管理者が選任されていたとしても十分な防火管理がなされていない状況も散見されるため、防火対象物の管理権原者が、資格を有する者(防火対象物点検資格者)に防火上必要な業務について消防法令に定める基準に適合しているかどうかの点検を行わせ、その結果を消防機関に報告する「防火対象物定期点検報告制度」を更に推進し、適切な防火管理が図られるようにする必要がある。

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