7 火災原因調査の現況
最近における科学技術の進歩による産業の高度化に伴い、大規模又は複雑な様相を呈する火災が頻発する傾向にあり、その原因の究明は更に高度の専門的知識が必要とされ、また、これらの火災が人心に与える影響も小さくないことから、その原因を一刻も早く明らかにして予防体制及び警戒体制を確立することは、一地方公共団体のみならず、国の責務でもあるということができる。これを踏まえ、平成15年の「消防組織法及び消防法の一部を改正する法律」により、大規模火災等について、消防庁長官の自らの判断により火災原因調査を行うことができる制度が導入された。
本制度による火災原因調査は、火災種別に応じて消防庁及び消防研究センターの職員(研究官を含む。)により編成される調査チームが、消防機関と連携して実施するものである。
平成18年度には、兵庫県宝塚市で発生したカラオケボックス火災において、管轄消防本部から消防庁長官に対し火災原因調査が要請され、この要請に基づいた火災原因調査を実施し、平成19年度には、東京都で発生した渋谷区温泉施設爆発火災において、消防庁長官の判断により主体的に、また新潟県中越沖地震により発生した東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所火災においては、管轄消防本部からの要請に基づき火災原因調査を実施している。
カラオケボックス、温泉施設等については、これらの調査内容等を踏まえ、「予防行政のあり方に関する検討会」を開催し、「予防行政のあり方について(中間報告)」を取りまとめ(平成19年12月)、これらの施設に係る防火安全対策の充実を図るため、「消防法施行令の一部を改正する政令及び消防法施行規則の一部を改正する省令」が平成20年7月に公布され、同年10月に施行された。
また、平成20年10月1日には、大阪市浪速区の個室ビデオ店において火災が発生し、25人もの死傷者を出す惨事となった。本火災は、多数の死傷者が発生し、社会的影響が極めて大きいことから、消防庁長官の判断により、主体的に消防庁職員7名を派遣し、火災原因調査を実施している。
性能規定に基づく特殊消防用設備等の開発・普及状況について
通常の消防用設備等と同等以上の性能を有するものとして、消防法第17条第3項の規定により総務大臣の認定を受けた特殊消防用設備等は、平成20年7月31日までに合計23件となっており、その内訳は下表のとおりである。
これら特殊消防用設備のうち加圧防煙システムについては、これまで12件の大臣認定を受ける等、十分な知見が蓄積されつつある。こうした状況を踏まえ、消防庁において「消防活動支援性能のあり方検討会」を開催し、消防法施行令第29条の4に基づく客観的検証法(いわゆるルートB)の規定整備に向けた検討が行われ、平成19年度に最終報告書がとりまとめられた。平成20年度にはこの報告書に基づき、規定の整備を行う予定である。
今後とも、新技術による特殊な消防用設備等の開発が期待されるところであり、その円滑な導入や普及を順次行っていく予定である。