平成20年版 消防白書

7 グループホームなど小規模施設の防火安全対策

高齢者、障害者等の災害時要援護者が安心して安全に生活し、社会参加できるバリアフリー環境の整備を推進するためには、火災等の災害時における消防機関等への緊急通報や迅速な避難誘導が円滑に行われるよう災害時要援護者の安全性の確保に留意する必要がある。
平成18年1月に、長崎県の認知症高齢者グループホームにおいて死者7人を出す火災が発生したことを踏まえ、消防庁では「認知症高齢者グループホーム等における防火安全対策検討会」を開催し、その検討報告を受け、自力避難困難者が多く入所する小規模社会福祉施設でも、防火管理者を選任し、施設の実態に応じ、スプリンクラー設備等の消防用設備等を設置することを義務付ける消防法施行令の一部を改正する政令及び消防法施行規則の一部を改正する省令が平成19年6月に公布され、平成21年4月から施行される予定である。
一方、カラオケボックス、温泉採取施設等における最近の火災の事例を踏まえ、自動火災報知設備又はガス漏れ火災警報設備を設置しなければならない施設の対象範囲を見直すとともに、当該消防用設備等について、その設置及び維持に関する技術上の基準の整備等を規定した消防法施行令の一部を改正する政令及び消防法施行規則の一部を改正する省令が平成20年7月に公布され、同年10月に施行された。
また、これらの火災に代表されるように、近年の小規模施設における火災被害を踏まえて、平成20年度に「小規模施設に対応した防火対策に関する検討会」を開催し、施設の多様化・複合化の状況に対応した防火対策を検討しているところである。
消防機関をはじめ行政機関は、これらの小模規施設の関係者等と連携を密にし、施設等が多様化する状況を踏まえた防火安全対策の推進について引き続き取り組んでいく必要がある。

製品火災対策の推進について

最近の火災の出火原因は極めて多様化しているが、その中で電気用品、燃焼機器、自動車等といった国民の日常生活において身近な製品が発火源となる火災が多発している。国民生活あるいは消費者の安心・安全が強く求められており、消防庁では製品火災対策の取組を強化している。

■製品を発火源とする全火災情報の収集、公表

消防庁の統計では、平成18年中の火災で電気用品、燃焼機器、自動車等のいわゆる製品を発火源とする火災は5,286件に上った。これらすべてを対象として、火災原因が製品欠陥によるものか否か調査を行った。
調査の結果、全体の8割を超える4,393件が使用方法の間違いなどによる「製品欠陥によらないことが明らかなもの」であったが、一方で「製品欠陥によることが明らかなもの」が174件、「製品欠陥によるものか否か不明なもの」が719件となった。
これら「製品欠陥によることが明らかなもの」及び「製品欠陥によるものか否か不明なもの」となった火災については、発火源製品ごとに該当火災件数を集計し、製造等事業者名と製品名を併せてこれを公表した。また、消防機関にも調査結果を通知するとともに、収集した情報を関係省庁と共有し、製品火災対策に活用している。

k110l010.gif

昨今、消費者の視点に立った行政サービスの実現が強く求められている。平成20年6月には消費者行政推進基本計画が閣議決定されるなど、製品火災対策を含む消費者の安心・安全の確保は、政府全体の重要課題として強力に推進されているところである。
消防庁の製品火災調査は、火災を網羅的に把握する消防機関の特性を活かし、消費生活用製品安全法の報告制度ではわからない、事業者が把握していない火災を含む、国内で発生したすべての火災に対する調査であり、関係省庁との連携により製品火災情報の収集に万全を期すこととしている。

■疑わしい火災情報の即時報告体制の整備

また、製品火災の疑いがある火災情報については、火災原因調査の確定前を含めた即時報告を消防機関に対して依頼し、収集された情報の関係省庁との共有を図っているところであり、消費者の安心・安全確保の推進に寄与しているところである。

関連リンク

はじめに
はじめに 昭和23年3月7日に消防組織法が施行され、市町村消防を原則とする我が国の自治体消防制度が誕生してから、本年で60周年を迎えました。これを記念して、本年3月7日の消防記念日には、自治体消防制度60周年記念式典を開催し、我が国における消防の発展を回顧するとともに国民から消防に課せられた使命の重...
1 地域総合防災力の強化の必要性
特集 地域総合防災力の強化~消防と住民が連携した活動の重要性~ 1 地域総合防災力の強化の必要性 (1)切迫する大規模災害 我が国では平成20年度も、岩手・宮城内陸地震や相次ぐ水害など、全国各地で大規模な自然災害による被害が発生している。 集中豪雨が頻発していることや、東海地震、東南海・南海地震、首...
2 地域防災の中核的存在である消防団の充実強化
2 地域防災の中核的存在である消防団の充実強化 (1)消防団の役割~連携のつなぎ役~ 地域総合防災力の強化を考える上では、以下の点から消防団の役割が極めて重要となる。 第一に、消防団は「自らの地域は自らで守る」という精神に基づき、住民の自発的な参加により組織された住民に身近な存在であるという点である...
3 自主防災組織などの活動
3 自主防災組織などの活動 (1)自主防災組織 防災体制の強化については、公的な防災関係機関による体制整備が必要であることはいうまでもないが、地域住民が連帯し、地域ぐるみの防災体制を確立することも重要である。 特に、大規模災害時には、電話が不通となり、道路、橋りょう等は損壊し、電気、ガス、水道等のラ...