平成20年版 消防白書

5 火災種別ごとの状況

(1)建物火災

平成19年中の建物火災の出火件数は3万1,248件で、前年に比べ258件(0.8%)減少している(第1-1-1表)。

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ア 建物火災は1日に86件、17分に1件の割合

平成19年中の建物火災の1日当たりの出火件数は86件で、17分に1件の割合で出火していることになる(第1-1-2表)。 

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また、月別の出火件数をみると、冬季から春先(1月~4月、12月)にかけて多く、全体の47.8%を占めている(第1-1-14図)。 

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イ 住宅における火災が建物火災の56.9%

平成19年中の建物火災の出火件数を火元建物の用途別にみると、住宅火災が最も多く、全体の56.9%を占めている(第1-1-15図、附属資料15)。 

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ウ 建物火災の43.5%が木造建物

平成19年中の建物火災を火元建物の構造別にみると、木造建物が最も多く、建物火災の43.5%を占めている。
火元建物以外の別棟に延焼した火災件数の割合(延焼率)を火元建物の構造別にみても、木造が最も多く、木造建物の火災の28.6%が別棟に延焼している。
また、火元建物の構造別に火災1件当たりの焼損床面積をみると、全建物火災の平均では44.4m2であるが、木造は65.1m2と最も広くなっている(第1-1-15表)。

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エ 建物火災の過半数は小火災

平成19年中の建物火災の出火件数を損害額及び焼損床面積の段階別にみると、損害額では1件の火災につき10万円未満の出火件数が1万6,394件であり、全体の52.5%を占めている。また、焼損床面積50m2未満の出火件数が2万4,803件で全体の79.4%を占めており、建物火災の多くは早い段階で消し止められている(第1-1-16表)。

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オ 建物火災はこんろによるものが多い

平成19年中の建物火災の主な出火原因は、こんろによるものが最も多く、次いでたばこ、放火、放火の疑い、ストーブの順となっている。
主な経過をみると、こんろを出火原因とする火災では、消し忘れによるものが67.8%、たばこを出火原因とする火災では、投げ捨てによるものが41.1%となっている(第1-1-16図)。

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カ 建物火災による死者の90.3%が住宅で発生

平成19年中の建物火災による死者1,502人について、建物用途別の発生状況をみると、住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)での死者は1,357人で、建物火災による死者の90.3%を占めている(第1-1-17図、附属資料14)。

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また、死因別では一酸化炭素中毒・窒息と火傷による死者の合計が1,131人で、建物火災による死者の75.3%を占めている(第1-1-18図、附属資料13)。

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キ 放水した建物火災の15.2%は覚知後5分以内に放水

平成19年中の建物火災における火元建物の放水開始時間別の焼損状況をみると、消防機関が火災を覚知し、消防隊が出動して放水を行った件数は1万5,693件(建物火災の50.2%)となっている。また、覚知から放水開始までの時間が10分以内のものは1万888件(放水した建物火災の69.4%)で、このうち5分以内のものは2,392件(放水した建物火災の15.2%)となっている。
放水した建物火災の1件当たりの建物焼損床面積を昼夜別にみると、夜間における焼損床面積は昼間の焼損床面積を20.3m2上回っている。これは、昼間に比べて覚知が遅れがちとなるため、消防機関が現地に到着したときは既に火災が拡大していること等の理由によるものと考えられる(第1-1-17表)。

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ク 建物火災の約半数は放水開始後30分以内に鎮火

平成19年中の消防隊が放水した建物火災について、鎮火所要時間別の件数をみると、放水開始後30分以内に鎮火した件数は6,767件で、放水した建物火災の43.1%を占めている。また、このうち11分から20分までに鎮火したものが2,288件で最も多くなっている(第1-1-19図)。

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(2)住宅火災の死者の状況

平成19年中の建物火災中、放火を除く件数は、2万8,132件となっており、このうち、住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)の火災(放火を除く)は1万6,177件となっている。 

ア 住宅火災による死者の半数以上が高齢者

平成19年中の住宅火災による死者1,357人のうち、放火自殺者、放火自殺の巻き添えとなった者及び放火殺人による死者(以下「放火自殺者等」という。)209人を除く失火等による死者は1,148人で、前年(1,187人)に比べ39人(3.3%)減少した。
また、このうち65歳以上の高齢者は684人(全体の59.6%)と半数を超えている(第1-1-20図、附属資料14)。

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イ 死者発生は高齢者層で著しく高い

平成19年中の住宅火災による年齢階層別の人口10万人当たりの死者発生数(放火自殺者等を除く。)は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、特に81歳以上の階層では、最も低い21歳から25歳の階層に比べ44.5倍となっている(第1-1-21図)。

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ウ たばこを発火源とした火災による死者が19.9%

平成19年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を発火源別にみると、たばこによるものが229人(全体の19.9%)で最も多く、次いでストーブ134人(同11.7%)、こんろ87人(同7.6%)となっており、これらを合わせると住宅火災による死者1,148人の39.2%を占めている(第1-1-22図)。

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エ 寝具類、衣服に着火した火災での死者が多い

平成19年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を着火物(発火源から最初に着火した物)別にみると、寝具類及び衣類に着火した火災による死者が275人で、死者数1,148人の24.0%を占めている(第1-1-23図)。

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オ 死者の46.5%が就寝時間帯

平成19年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を時間帯別にみると、就寝時間帯である22時から翌朝6時までの間の死者が534人で、住宅火災の死者1,148人の46.5%を占めている(第1-1-24図)。

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カ 逃げ遅れによる死者が60.7%と圧倒的に多い帯

平成19年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を死に至った経過の発生状況別にみると、逃げ遅れが697人(全体の60.7%)と最も多くなっている(第1-1-25図)。

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(3)林野火災

平成19年中の林野火災の出火件数は2,157件で、前年に比べ581件(36.9%)増加している。焼損面積は717haで、前年に比べ112ha(13.5%)減少している。損害額は2億3,659万円で、前年に比べ1億238万円(76.3%)増加している。また、林野火災による死者数は13人で、前年に比べ1人(7.1%)減少している(第1-1-18表)。

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林野火災の出火件数を月別にみると、平成19年中は3月に最も多く発生しており、次いで4月、2月と、空気の乾燥している春先に多くなっている(第1-1-26図)。

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林野火災の出火件数を焼損面積の段階別にみると、焼損面積が10ha未満の林野火災の出火件数は2,143件で、全体の99.4%を占めている(第1-1-19表)。 

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林野火災を出火原因別にみると、たき火によるものが561件で全体の26.0%を占め最も多く、次いで、火入れ、放火(放火の疑いを含む。)の順となっている(第1-1-27図)。

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(4)車両火災

平成19年中の車両火災の出火件数は5,798件で、前年に比べ445件(7.1%)減少し、死者数は179人で、前年に比べ21人(10.5%)減少している。
また、車両火災による損害額(車両火災以外の火災区分に分類している車両被害は除く。)は26億1,312万円で、前年に比べ2億8,228万円(9.7%)減少している(第1-1-20表)。 

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出火原因は、放火によるもの(放火の疑いを含む。)が1,106件(全体の19.1%)と最も多くなっている(第1-1-28図)。

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(5)船舶火災

平成19年中の船舶火災の出火件数は123件で、前年に比べ21件(20.6%)増加し、死者数は2人で、前年に比べ2人増加している。
また、船舶火災による損害額(船舶火災以外の火災区分に分類している船舶被害は除く。)は3億180万円で、前年に比べ3,736万円減少している(第1-1-21表)。

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出火原因は、溶接機・切断機によるものが13件(全体の10.6%)と最も多くなっている(第1-1-29図)。

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(6)航空機火災

平成19年中の航空機火災の出火件数は6件で、前年に比べ5件増加しているが、死者は発生していない。
また、航空機火災による損害額(航空機火災以外の火災区分に分類している航空機被害は除く。)は99億7,626万円で、前年に比べ99億7,440万円増加している(第1-1-22表)。 

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