平成20年版 消防白書

第2節 消防職団員の活動

1 活動状況

(1)出動状況

平成19年中における全国の消防職団員の出動状況をみると、火災等(救急業務を除く、火災、救助活動、風水害等の災害、特別警戒、捜索、誤報等及びその他をいう。)への出動回数は107万9,160回で、出動延人員は1,000万4,800人である。また、火災等への1日当たりの出動回数は2,949回、29秒に1回の割合で出動したことになる。
そのうち、消防団員の火災等への出動回数は28万3,628回、出動延人員は462万847人となっている(第2-2-1表)。

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(2)消防団員の活動状況

全国各地で地震や風水害等の大規模災害が相次いで発生しており、多くの消防団員が出動し、常備消防と連携しながら、昼夜を分かたず多岐にわたる活動を行っている。
平成18年梅雨前線に伴う大雨被害、台風第13号と豪雨による被害、竜巻による災害など、風水害における水防活動や住民の避難誘導、平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震発生時の消防団員の献身的な活動は、地域に大きく貢献している(特集「地域総合防災力の強化~消防と住民が連携した活動の重要性~」参照)。
このように全国の消防団は、自宅が被災した消防団員もいる中で出動し、地域の防災力の中心として、不眠不休で果敢に活動し、被害の拡大防止や、地域住民の安心・安全の確保に貢献している。その支えとなったのが、日頃の訓練と「自らの地域は自らで守る」という崇高な郷土愛護の精神である。消防団員は、地域に居住又は勤務する住民により構成され地域に密着しており、地理や住民の居住先等の地域情報を十分に把握しているため、大規模災害時には特に能力を発揮している。
一方、平常時の活動としては、訓練のほか、応急手当等の普及・指導・講習会や住宅の防火訪問の実施、広報紙の発行など、各地で活発な取組が行われている。また、毎年増加傾向にある女性消防団員は、一人暮らし高齢者宅への防火訪問、応急手当の普及啓発、予防広報など平常時の活動に幅広く活躍している。
このように、消防団は地域における身近な消防防災のリーダーとして、地域の安心・安全のため重要な役割を担っている。

北海道洞爺湖サミットにおける消防特別警戒

平成20年7月7日から9日までの3日間にわたり、北海道洞爺湖町にある「ザ・ウィンザーホテル洞爺」を主会場として、主要先進国首脳会議のほか、関係国・機関の首脳などが参加した拡大会議が開催されました。
消防庁では、サミット期間中の消防警戒体制の万全を期すため、平成19年10月に「北海道洞爺湖サミット消防・救急対策委員会」を設置し、応援活動体制や警戒活動要領などについて検討を重ねてきました。
その結果、首脳会議等が行われる3日間を含め、7月5日から11日までの一週間を消防特別警戒期間とし、本サミットにおける消防・救急体制については、現地の状況や昨今の社会情勢を踏まえ、開催地消防本部をはじめ、北海道内及び道外の主な消防本部から、消防職員約1,000人と消防車両74台、消防ヘリ3機の体制による消防特別警戒を実施しました。
警防部隊については、サミット関係施設及び要人の移動経路となる空港や高速道路の直近に仮設プレハブを設置するなど、2交代24時間体制で消防職員及び消防車両を配置して警戒活動にあたりました。また、救急隊についても、主会場のホテルや多くのマスメディアが集まったIMCセンター内に配置しました。
一方、予防対策としては、サミット関係施設における事前防火指導や従業員に対する自衛消防訓練指導を実施するなど、火災等の未然防止と災害発生時の迅速な体制の整備を図るとともに、サミット警戒期間中は予防警戒員を関係施設内の防災センターに配置し、事象発生に備えました。
消防特別警戒期間中における事案としては、救急搬送が5件、救急隊による現場処置が2件ありました。救急搬送のうち1件については、消防ヘリを活用し札幌市内の病院へ搬送しました。また、防災機器の作動により防災センターに詰めていた予防警戒員による現場確認や復旧措置などが全体で34件ありました。

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