平成20年版 消防白書

4 消防大学校における教育訓練及び技術的援助

消防大学校は、昭和23年4月に国家消防庁の内部組織の「消防講習所」として設置されたが、その後、昭和34年4月の消防組織法改正により「消防大学校」となったものである。
消防大学校は、国及び都道府県の消防事務に従事する職員又は市町村の消防職団員に対し、幹部として必要な高度な教育訓練を行うとともに、都道府県及び政令指定都市等の消防学校又は消防訓練機関に対し、教育訓練に関する必要な技術的援助を行っている。

(1)施設・設備

消防大学校の教育訓練施設は、本館には250人収容の大教室、3つの通常規模教室、視聴覚教室、理化学燃焼実験室、図書館等のほか、様々な災害現場をシミュレートして指揮者の情報収集整理・判断・指揮命令能力を養成するマルチメディア教室を設けている。

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第2本館には、300人収容の講堂のほか、救急訓練室、特別教室、屋内訓練場が設けられている。救急訓練室においては、高度救急処置人形などの機材が整備されており、救急救命士の気管挿管や薬剤投与の講習にも対応できるものとなっている。
火災防ぎょ訓練施設は、スチームとスモークマシンを併用し、濃煙高温の環境下での訓練が可能な屋内火災防ぎょ訓練棟及び地下1階、地上11階の高層訓練塔を有しており、複雑な建物内を想定した、より実践的な消火・救助訓練を行うことができる。
教育訓練車両は、指揮隊車、普通ポンプ車、水槽付きポンプ車、救助工作車、高規格の救急自動車を保有している。

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(2)教育訓練の実施状況

消防大学校では学科、実務講習を合わせて、平成19年度までに延べ4万5,292人の卒業生を送り出しており(うち平成19年度は1,512人)、平成20年度教育訓練計画上の定員は1,864人としている(第2-3-4表)。

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(3)消防学校等に対する技術的援助

自然災害や火災・事故等の態様の多様化・大規模化に伴い、都道府県等の消防学校における教育訓練も高度な内容が求められており、その円滑な実施に資するため、次のような技術的援助を行っている。

ア 消防学校教官等に対する教育訓練

消防大学校の教育訓練では、新任消防長・学校長科において消防学校長に対する新任教育を、また、新任教官科において消防学校教官に対する新任教育を行っている。さらに、専科教育の各学科では教育指導者養成を目的としており、教育技法を学び、講義演習を実施している。

イ 特別研究生の受入れ

都道府県等の消防学校の中堅的立場にある教官を特別研究生として受け入れ、消防学校における教育訓練について、カリキュラム見直し、教材作成のための機会を提供している。

ウ 講師の派遣

都道府県等の消防学校における教育内容の充実を図るため、消防学校等からの要請により、警防、予防、救急、救助等の消防行政・消防技術について講師の派遣を行っている。平成19年度は延べ100回の講師の派遣を実施した。

エ 消防教科書の作成

都道府県等の消防学校において使用する初任者用教科書の編集を行っており、平成20年4月現在21種類が発行されている。

(4)自主防災組織に関する調査・研究

平成16年より自主防災組織の教育訓練の内容及び教育形態について調査研究を行うとともに、自主防災組織指導者が活用するための教本等を作成している。

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