平成20年版 消防白書

トピックスI 大規模災害に備える

1 はじめに

(1)切迫する大地震

特集で述べたように我が国では、東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震等の大規模地震発生の切迫性が指摘されている。また、我が国には、陸域において約2,000もの活断層が確認されており、こうした活断層の活動によって引き起こされる強い地震がいつ、どこで起こるか分からない状況にある。
このような中、大規模地震に備えることが喫緊の課題となっている。

(2)地震防災対策の強化

消防庁では、これまで地震防災対策の強化・推進に取り組んできた。特に平成7年の阪神・淡路大震災以降、直ちに緊急消防援助隊が創設され、また同年の消防組織法の改正により広域応援体制の充実が図られた。さらに、平成15年には、消防組織法の改正により緊急消防援助隊が法制化され、翌年4月に新たな体制で発足した緊急消防援助隊は、今日に至るまで地震時等における出動実績を着実に積み重ねてきている。平成19年には、大規模建築物等における防災管理体制を強化するための消防法の改正が行われるなど、法令の整備が図られてきたが、この間、防災拠点となる公共施設の耐震化を促進するための環境整備や災害時における消防と医療の連携の推進等の種々の地震対策もすすめてきたところである。
平成20年度においても、更なる地震防災対策として、「消防法及び消防組織法の一部を改正する法律」(平成20年法律第41号)が平成20年5月28日に公布、同年8月27日に施行され、行政機関による危険物流出等の事故の原因調査体制の整備とともに、災害時に全国規模で消防応援を行う緊急消防援助隊の機動力の強化が図られている。
また、住民に情報を伝達するための全国瞬時警報システム(J-ALERT)及び住民の安否情報の収集・提供のための安否情報システムの活用の推進や、事業所の自衛消防力の確保を促進することによる防災力の強化を図るための取組なども進められている。
これらの施策の詳細について、以下、項目ごとに述べることとする。

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