平成20年版 消防白書

3 広域化の実現に向けて

今後は、各都道府県が策定した推進計画に基づき、広域化対象市町村間で広域化に向けた具体的な協議が開始され、広域消防運営計画の策定が進み、消防の広域化が実現することとなるが、広域化が実現することにより次のような効果が期待される。

(1)住民サービスの向上

広域化により1つの消防本部が保有する部隊数が増え、初動人員が増強されるとともに、指令センター業務の統合や出動計画の見直し等により、統一的な指揮のもとで効率的に部隊を投入することができるようになり、効果的な災害対応が可能となる。
また、消防本部の管轄区域が拡大することにより、消防署所の配置及び管轄区域の適正化を図ることができるため、現場到着時間の短縮等の効果が期待できる。

(2)人員配備の効率化と充実

広域化により1つの消防本部全体の職員数が増加することにより、総務部門や通信指令業務の効率化で生じた余剰人員を、住民サービスを直接担当する部門に配置することができるようになり、当該部門を増強することができる。特に近年著しく高度化している救急業務や予防業務について、専門的・専任的な職員を養成することも可能となる。
また、人事ローテーションの設定が容易になることや、職務経験の不足や単線的な昇進ルートが解消されることが期待されるため、様々な職務経験を有し、幅広い分野の識見を有する職員を養成することが可能となる。
さらに、職員1人当たりの教育及及び訓練の機会も増えることが予想されるとともに、広域化実現前の他の消防本部の職員と接し、切磋琢磨することにより、各職員の質の向上が図られるものと考えられる。

(3)消防体制の基盤の強化

広域化により財政規模が拡大するため、消防施設設備の計画的な整備の推進、重複投資の回避等が図られるなど、効率的な財政運営に資することとなる。また、小規模な消防本部では整備が困難なはしご付消防自動車や救助工作車などの高度な車両や発信地表示システム等を備えた高機能な指令設備等の計画的な整備が可能となる。

消防庁では、広域化の実現によって期待される以上のようなメリットを踏まえ、広域化対象市町村において広域化の実現に向けた積極的な検討が行われるよう、消防広域化推進本部を中心に、引き続き広域化の推進に取り組むこととしている。

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