平成20年版 消防白書

3 消防と医療の連携の推進

(1)消防機関と医療機関が定期的に協議する場の設置

「消防機関と医療機関の連携に関する作業部会」では、早急に講じるべき対策等について、平成19年度の検討成果を中間報告として取りまとめた。
その中で、救急搬送の適切な実施を確保するために、早急に講じるべき対策としては、医療機関による救急医療情報システムへの迅速・正確な入力、救急隊による正確な傷病者観察とそれに基づいた適切な医療機関選定・情報伝達、受入可能と表示した医療機関による受入の確保等が円滑に行われることが必要であることが指摘された。また、これら一連の行為は、消防機関、医療機関が連携して行うものであり、その適切な実施を確保するためには、消防機関、医療機関等の関係者による検証・協議の場を設置し、救急搬送・受入医療体制について事後検証を行うとともに、検証に基づく改善策について協議することが有効であるとされ、このような検証・協議を行う場としては、都道府県や地域のメディカルコントロール協議会の活用等が考えられると指摘された。
これまで、メディカルコントロール協議会は、医学的観点から救急救命士を含む救急隊員が行う応急処置の質を保障することを主な役割として、各地域において体制の確保が図られてきた。メディカルコントロール協議会の役割の重要性にかんがみ、消防庁では、平成19年5月、関係機関と協力・連携し、「全国メディカルコントロール協議会連絡会」を立ち上げ、全国のメディカルコントロール協議会の質の底上げを図るとともに、関係者間で情報共有や意見交換を行う環境を整えるなどメディカルコントロール体制の充実強化を推進している。また、平成20年度は「メディカルコントロール作業部会」及び「救急業務高度化推進検討会」において、メディカルコントロール協議会の位置付けの強化等について検討を進めている。

(2)救急相談事業の推進

救急自動車の出動を要請すべきかどうかについて、十分な医学的知識に基づく判断を市民に求めることは困難であり、例えば赤ちゃんの突然の発熱やけが等の場合に、それが軽症であっても、市民が不安を感じ救急自動車の出動を要請してしまうことがある。従来も、消防機関においては市民からの問い合わせに対応するサービスや、診療可能な医療機関の情報を提供するサービス等を行っていたが、医学的判断に基づいた相談は行われてこなかった。
東京消防庁においては、平成19年6月より、救急自動車の出動要請をするかどうか迷った場合に、緊急受診の要否に関するアドバイスや、医療機関の紹介を行い、さらには応急手当等に関して相談に応じる「東京消防庁救急相談センター」(#7119)を開設し、医師、看護師等が24時間365日体制で対応し大きな成果を上げているところである。
市民の救急相談に対し救急車の出動も含め適切に対応することで、市民の安心と安全を確保していくため、消防庁では、今後、消防と医療の一層の連携を図りつつ、救急相談事業について推進していくこととしている。

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