平成21年版 消防白書

[国際協力・国際交流]

1 開発途上諸国等に対する国際協力

(1)アジア国際消防フォーラムの開催

アジア諸国は、人口の増大と都市化が進む一方で、各種の災害に対し、ぜい弱であることから、我が国は、防災面の国際協力の観点から、これら諸国における防災機能の拡充のため知見・技術の共有に努める用意がある。
また、国際消防救助隊の派遣をはじめとする国際協力を円滑に行うためには、日常的に政府間での情報交換と人的ネットワークを形成しておくことが極めて重要である。
こうした視点から、我が国の消防防災に関する知識・技術を活用して、アジア諸国の消防防災能力の向上に資するため、平成19年度から定期的にアジア国際消防フォーラムを開催している。
第1回は平成19年度にベトナムにおいて開催し、第2回となる平成20年度のフォーラムは、トルコ共和国で開催した。
第3回は平成21年9月にタイ王国・バンコク市で開催し、バンコク・東京など両国の大都市に共通する防災上の課題である都市防災の現状及び施策の拡充に資する我が国の取り組み等について、双方の施策の現状の紹介や特徴的な課題についての議論を行った。

(2)開発途上諸国からの研修員受入れ

消防庁では、JICAと連携・協力し、開発途上諸国の消防防災機関職員を対象に救急救助技術研修、消火技術研修及び火災予防技術研修の3コースの集団研修を、地方消防本部の協力の下で実施している。
救急救助技術研修は昭和62年(1987年)度から、消火技術研修は昭和63年(1988年)度から、火災予防技術研修は平成2年(1990年)度から実施しており、平成21年度は、救急救助技術研修については大阪市消防局において8か国から9人(累計196人)、消火技術研修については北九州市消防局において5か国から7人(累計198人)、火災予防技術研修については東京消防庁において5か国から6人(累計134人)の研修生を受け入れ、2~3か月間に及ぶ研修を実施した。
また、地域別研修として、ベトナムに対して「消火活動指揮技術研修」を発足させた。
本研修においては、ベトナムの一般消防官を指導する同国消防大学校教官を研修員として迎え、彼らに対し、平成21年度から今後3か年度にわたって我が国が現在運用している最新の救助技術を指導し、もって、研修員における我が国救助技術のベトナムへの移転、さらには、移転される技術のベトナム国内への普及伝播が達成されることを期するものである。

消防庁では、上記集団研修・国別研修のほかにも、開発途上諸国からの研修、視察等の要望に随時対応している。各国大使館、JICA、財団法人自治体国際化協会等の協力依頼に基づき、各国からの消防防災、気象分野等の関係者の使節を受け入れ、それぞれのニーズに合わせて研修を実施している。

(3)トップマネージャーセミナーの実施

消防庁では、JICAと連携・協力し、消防防災分野の国際交流を図ることを目的として、平成10年(1998年)度から、各国消防行政に携わる幹部職員を日本へ招いて意見交換等を行う、トップマネージャーセミナーを実施している。

(4)技術協力プロジェクトへの協力

消防庁では、JICAとの連携・協力により、次の技術協力プロジェクトの内容、実施の枠組みについての検討・助言等に参画している。

タイ王国の防災体制の強化に係る災害対応の枠組み拡充等を目的として実施している。本プロジェクトでは、平成22年度から、バンコク首都圏に留まらず一層広域的な防災枠組みの構築に向けての具体的活動が展開される予定となっている。

平成22年度から実施予定の本プロジェクトにおいては、中国の各省政府に属する〔1〕地震緊急救援隊向け指導者に対する都市型捜索救助技術訓練の実施、〔2〕災害応急対応担当幹部職員に対する同対応能力強化のための研修の実施を進める。プロジェクトの進行に伴い、今後カウンターパートの受入れ、長短期専門家の派遣及び中国側関係者の訪日研修の実施等が図られる見込みである。
本年度は、中国地震局、同局応急捜救センター、中国公安部消防局等の幹部職員を受け入れ、日本の災害応急対応体制、救助体制等についての講義、視察等を実施した。

前掲のように地域別研修として我が国において今後3年間にわたって実施している本研修においては、研修カリキュラムの一環として、毎年度我が国での課程修了後、次年度来日までの間に履修事項のフォローアップ・指導のため短期指導員を派遣する。

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