平成21年版 消防白書

2 救急搬送における医療機関の受入状況

全国各地における救急搬送時の受入医療機関の選定困難事案の発生を受けて、消防庁では救急搬送における傷病者の搬送・受入状況を把握するために、「救急搬送における医療機関の受入状況等実態調査」を実施し、平成19年における
〔1〕 重症以上傷病者搬送事案
〔2〕 産科・周産期傷病者搬送事案
〔3〕 小児傷病者搬送事案
〔4〕 救命救急センター等搬送事案
の4事案について調査を行い、平成20年3月に結果を公表した。更に、平成20年中の救急搬送についても同様の調査を実施し、平成21年3月に結果を公表している(消防庁ホームページ参照http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/h21/2103/210319-2houdou.pdf)。

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「平成20年中の救急搬送における医療機関の受入状況等実態調査」によれば、例えば重症以上傷病者搬送事案において、医療機関に受入れの照会を4回以上行った事案が14,732件(平成19年14,387件)あり、依然として相当数の受入医療機関の選定困難事案が発生している。また、地域別の状況を見ると、首都圏、近畿圏等の大都市部において照会回数が多く、選定困難事案の発生が一部の地域に集中して見られる傾向があることが判明した(図3)。

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また、重症以上傷病者の搬送事案のうち、照会回数11回以上の事案における受入れに至らなかった主な理由としては、処置困難(29.2%)、ベッド満床(24.4%)、手術中・患者対応中(18.6%)等の理由が挙げられている(図4)。

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さらに、救命救急センター等に搬送された事案において、3次救急医療機関と2次以下の救急医療機関における受入れに至らなかった理由の割合について分析を行ったところ、3次救急医療機関で受入れに至らなかった理由としては手術中・患者対応中(32.6%)、ベッド満床(25.0%)が高いのに対し、2次以下の救急医療機関では処置困難(23.6%)、専門外(18.8%)が高くなっている(図5)。本来2次以下の救急医療機関で受け入れるべき患者が3次救急医療機関に搬送され、受入能力を超えてしまうことにより受入不能となるケースがある等の状況が推測される。

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