はじめに
我が国の消防は、昭和23年に消防組織法が施行され、市町村消防を原則とする自治体消防制度が誕生して以来、関係者の努力の積重ねにより制度、施策、施設等の充実強化が図られ、火災の予防、警防はもとより、救急、救助から地震、風水害等への対応まで広範囲にわたり、日々国民の安全の確保に努めているところです。
しかしながら、本年は、4月に北朝鮮によるミサイル発射事案が発生、7月から8月にかけては中国・九州北部豪雨や台風9号、駿河湾を震源とする地震等の大規模災害が相次いで発生し、全国各地に大きな被害をもたらしたところです。さらには9月に発生したインドネシア西スマトラ州パダン沖地震災害においては国際消防救助隊を派遣するなど、消防防災行政を取り巻く環境は、予断を許さないところです。
このように災害等から国民の生命、身体及び財産を守るという消防の責務はますます大きなものとなってきており、その中で国民の安心と安全を向上させていくためには、総合的な消防防災行政を迅速かつ積極的に推進していく必要があります。
平成21年版消防白書では、火災をはじめとする各種災害の現況と課題、消防防災の組織と活動、国民保護への取組、自主的な防災活動と災害に強い地域づくり等について解説するとともに、特集として「消防と医療の連携の推進~消防と医療の連携による救急搬送の円滑化~」と題し、平成21年10月30日に施行された消防法改正の経緯、改正内容等について解説しています。
また、消防防災上、特に話題性のある3項目をトピックスとして紹介しています。
トピックスIは、平成21年4月以降の新型インフルエンザ(H1N1型)に対するWHO及び政府の動き、新型インフルエンザの発生を受けての消防機関の対策等について記述した「新型インフルエンザの発生と対応」です。
トピックスIIは、住宅用火災警報器の早期普及のための国民運動的な取組の展開について記述した「住宅用火災警報器の速やかな普及に向けた取組」です。
トピックスIIIは、個室ビデオ店や社会福祉施設等で発生した火災を受けて実施した緊急調査の結果や防火安全対策の推進について記述した「新たな形態の建築物や施設等に対応した防火対策」です。
これらを踏まえ、この白書が国民の生命、身体及び財産を災害から守る消防防災活動において、国民の皆様の認識と理解を深めるとともに、国、地方公共団体だけではなく住民、企業も含めた総合的な消防防災体制の確立に広く活用いただけることを願います。
平成21年11月