平成21年版 消防白書

トピックスI 新型インフルエンザの発生と対応

1 消防機関における新型インフルエンザ対策

新型インフルエンザとは、従来ヒトからヒトへの感染が認められていなかったインフルエンザウイルスが、遺伝子変異によりヒトからヒトへ容易かつ継続的に感染するようになったものである。特に、鳥類の中でまん延するインフルエンザウイルスの中で、ヒトへの感染力が認められたH5N1型インフルエンザウイルスが、新型インフルエンザとして流行することが危惧されている。
毒性の強いおそれがある新型インフルエンザの発生時には、消防機関に対し救急要請が殺到することが予想され、増大する救急要請に対応するためには、消防機関において感染防止対策を徹底し、かつ地方公共団体の衛生部局や医療機関と連携し、搬送・受入体制を構築しておくことが重要である。
消防庁では、救急隊員の感染防止対策を推進するため、平成20年度には、海外から新型インフルエンザの流入が予想される4空港(成田、中部、関西、福岡)の所在する消防本部に対し感染防止用資器材を重点的に配備するとともに、全消防本部に対して新型インフルエンザ発生から1週間の初動対応を可能にするための感染防止用資器材の配備を行っている。
また、平成20年5月に神奈川県川崎市及び関係機関と協力し、「消防機関における新型インフルエンザ対策総合訓練」を実施した。同訓練においては、新型インフルエンザが国内において発生した発生初期段階における初動対応について実働訓練を行い、初動時における消防機関と関係機関との連携体制を確認した。
さらに、新型インフルエンザが発生した場合、救急搬送や救急要請の件数の増大が予想され、かつ消防職員の感染による業務体制の縮小、さらに事業者の感染による資器材供給の不足が予想されるため、消防機関において新型インフルエンザ流行時においても救急業務を継続するための計画(業務継続計画)を策定しておく必要がある。そこで、平成20年6月に「消防機関における新型インフルエンザ対策検討会」を設置し、同年12月には、「消防機関における新型インフルエンザ対策のための業務継続計画ガイドライン」をとりまとめ、消防機関が業務継続計画を策定する際に参考となる優先業務選定リストの例や、感染疑い患者を救急搬送する際の留意事項等を示した。

関連リンク

はじめに
はじめに 我が国の消防は、昭和23年に消防組織法が施行され、市町村消防を原則とする自治体消防制度が誕生して以来、関係者の努力の積重ねにより制度、施策、施設等の充実強化が図られ、火災の予防、警防はもとより、救急、救助から地震、風水害等への対応まで広範囲にわたり、日々国民の安全の確保に努めているところで...
1 はじめに
特集 消防と医療の連携の推進 ~消防と医療の連携による救急搬送の円滑化~ 1 はじめに 救急業務は、国民の生命・身体を事故や災害、疾病等から守り、安心・安全な社会を確保するものであり、国民にとって必要不可欠な行政サービスとして定着している。 近年、医療の進歩とともに、傷病の発生初期に実施すると効果的...
2 救急搬送における医療機関の受入状況
2 救急搬送における医療機関の受入状況 全国各地における救急搬送時の受入医療機関の選定困難事案の発生を受けて、消防庁では救急搬送における傷病者の搬送・受入状況を把握するために、「救急搬送における医療機関の受入状況等実態調査」を実施し、平成19年における 〔1〕 重症以上傷病者搬送事...
3 消防法の改正
3 消防法の改正 (1)改正までの経緯 救急搬送における受入医療機関の選定が大変厳しい状況にあることを踏まえ、平成19年から平成20年にかけて「救急業務高度化推進検討会」に「消防機関と医療機関の連携に関する作業部会」を設け、円滑な救急搬送・受入医療体制を確保するための対策について検討が重ねら...