平成22年版 消防白書

2 海上災害対策の現況

タンカー等危険物積載船舶の大型化、海上交通の輻そう化、原油、LPG等受入基地の建設等により、海上災害発生の危険性が増大してきており、また、海上災害が発生した場合には、海洋汚染等により周辺住民にも重大な被害を及ぼすおそれが大きくなっている。
このため、地方公共団体においても、港内又は沿岸部における海上災害の発生に備え、地域防災計画に防災関係機関との連絡、情報の収集、応援要請、防災資機材の調達等の緊急措置がとれるような事前対策等を定め、防災体制の強化を図るとともに、大規模な災害となった場合には、災害対策本部の設置等により所要の対策を講じることとしている。
船舶火災等の海上災害における消防活動は、制約が多く極めて困難であるため、消防庁では、これまで、船舶火災時における消防活動上の留意事項を取りまとめ、関係消防本部に示している。また、消防機関においては、消防艇をはじめとする海上防災資機材の整備、防災関係機関との協力関係の確立、防災訓練の実施等に努め、万一の海上災害に備えている。
なお、船舶火災の消火活動については、港湾所在市町村の消防機関と海上保安官署間で業務協定が締結されているほか、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」によっても、海上災害に対する消防機関と海上保安官署との協力関係が図られている。
また、海上における捜索救助に関しては、「1979年の海上における捜索及び救助に関する国際条約」(略称SAR条約)などを踏まえて、関係機関で構成する連絡調整本部が海上保安庁に設けられているほか、海上保安庁の管区海上保安本部単位に都道府県の消防防災部局、関係消防本部等を含む地方の関係機関で構成する救助調整本部が設けられ、海難救助対策の推進を図るため関係機関が密接に協力している。

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