平成22年版 消防白書

第7節 広域消防応援と緊急消防援助隊

1 消防の広域応援体制

(1)消防の相互応援協定

市町村は、消防に関し必要に応じて相互に応援すべき努力義務があるため(消防組織法第39条第1項)、消防の相互応援に関して協定を締結するなどして、大規模な災害や特殊な災害などに適切に対応できるようにしている。
平成22年4月1日現在、消防相互応援協定の締結状況は、同一都道府県内の市町村間では1,739、異なる都道府県域に含まれる市町村間では569であり、全国の合計は2,308である。
現在、すべての都道府県において都道府県下の全市町村及び消防の一部事務組合等が参加した消防相互応援協定(常備化市町村のみを対象とした39協定を含む。)が結ばれている。
さらに、特殊な協定として、高速道路(東名高速道路消防相互応援協定ほか)、港湾(東京湾消防相互応援協定ほか)や空港(関西国際空港消防相互応援協定ほか)などを対象としたものがある。

(2)消防広域応援体制の整備

大規模な災害や特殊な災害などに対応するためには、市町村あるいは都道府県の区域を超えて消防力の広域的な運用を図る必要がある。
このため、消防庁では、2に述べる緊急消防援助隊の充実強化を図るとともに、大規模・特殊災害や林野火災等において、空中消火や救助活動、救急活動、情報収集、緊急輸送など消防防災活動全般にわたりヘリコプターの活用が極めて有効であることから、その運用をより効果的に実施するため、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」を策定して、応援要請の手続の明確化等を図り、消防機関及び都道府県の保有する消防防災ヘリコプターによる広域応援の積極的な活用を推進している(第2―7―1表)。

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平成21年7月中国・九州北部豪雨では、山口県内において孤立した住民を、山口県消防防災航空隊並びに同要綱の規定に基づき出動した広島市消防航空隊、北九州市消防航空隊、福岡市消防航空隊及び愛媛県消防防災航空隊のヘリコプターにより、144人を救助するなどの実績を挙げている。
また、最近の例では、平成22年8月に香川県小豆郡で発生した大規模な林野火災において空中消火活動を行い、被害の拡大防止と早期鎮火に貢献した。
今後とも、消防防災ヘリコプターの広域的かつ機動的な活用を図るため、臨時離着陸場の確保並びに情報収集活動を行うためのヘリコプターテレビ電送システム、可搬型ヘリコプターテレビ受信装置、可搬型衛星地球局の整備等を推進し、全国的な広域航空消防応援体制の一層の充実を図る必要がある。

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