平成22年版 消防白書

2 今後の取組

平成24年度末を目途に各地で消防の広域化について検討が行われているところであるが、今後の検討で留意すべき点は以下のとおりである。
消防の広域化に伴う消防本部の管轄区域等の確定が、消防救急デジタル無線システムの基本設計以降となれば、消防救急デジタル無線システムの整備費用にも影響する。このため、消防救急デジタル無線システムの整備費用の低廉化の観点からは、消防の広域化に伴う消防本部の管轄区域等の確定について、可能な限り、消防救急デジタル無線システムの基本設計以前となることが望ましい。
各都道府県及び各消防本部の事情等にもよるが、一般的に消防救急デジタル無線システムの運用開始までには、4年程度(基本設計1年、実施設計1年、整備(工事・試験を含む。)2年程度)を要すると考えられることを考慮すれば(ただし、基本設計に向けた諸準備のための期間も考慮する必要がある。)、遅くとも平成24年度には基本設計に着手・完了する必要があり、その観点からは平成23年度中に消防本部の管轄区域等を確定し、基本設計に向けた諸準備を行う必要があると考えられる。
そのためにも、消防の広域化の検討を促進する必要があり、消防の広域化の各ブロックにおいて、平成22年度中には協議会組織を立ち上げ、検討する体制を整備することが望ましい(図2参照)。

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しかしながら、消防の広域化についての検討がスケジュールに沿って進んでいかない場合も想定されるところである。この場合、消防救急デジタル無線システムの基本設計に着手する時点の消防本部の管轄区域等を前提に設計等に着手し、後から消防の広域化を進めていくことになる。
この場合であっても、消防救急デジタル無線システムの整備費用をできるだけ低廉化する観点からは、消防の広域化に先行して消防指令業務の共同運用*1を実施することとし、かつ、それに伴う消防指令センターの位置等の決定が、消防救急デジタル無線システムの基本設計以前となることが望ましい。

*1 消防指令業務の共同運用:複数の消防本部における消防指令業務(通報受付業務や部隊運用管理等)を1か所の消防指令センターにおいて共同で運用するもの。

このように、3者(消防の広域化・消防指令業務の共同運用・消防救急デジタル無線システムの整備)の関係やスケジュールを勘案しながら、消防の広域化の検討を進め、消防体制の充実強化・高度化を実現していくことが必要である。

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