平成22年版 消防白書

トピックスIII 消防の広域化の推進

近年、災害が大規模化・多様化しており、消防を取り巻く環境が大きく変化している中で、消防防災力を高めて行政課題に的確に対応するためには、消防体制のさらなる充実強化・高度化が必要である。こうした中、平成18年に消防組織法が改正され、さらに、市町村の消防の広域化に関する基本指針(以下「基本指針」という。)が定められた。その後、基本指針に基づき、都道府県において消防の広域化の対象となる市町村の組合せ等について検討され、消防広域化推進計画(以下「推進計画」という。)が策定された。現在は、推進計画に基づく広域化対象市町村間において、消防の広域化に向けた検討が進められているところである。
ここでは、広域化に向けた全国の状況や今後の取組について紹介する。

1 全国の状況

推進計画は、平成19年度に31、平成20年度に10、平成21年度に3の都道府県において策定され、平成22年10月現在、計画策定済みの団体数は47都道府県のうち44となっている。推進計画に基づき広域化が実現した場合、平成19年4月現在807本部であったものが、295本部(推進計画未策定団体を含む。複数の案があるところについては、そのうちの1つの案を取り上げている。)となり、非常備町村及び小規模消防本部は大幅に減少することになる。
平成22年6月現在、都道府県の推進計画により広域化が計画されているところは、140ブロック(複数の案があるところについては、そのうちの一つの案を取り上げている。)あり、広域化に向けた協議会や協議組織を設立しているブロックが20ブロック、協議会設置のための準備組織を設立しているブロックが20ブロック、勉強会を設立しているブロックが62ブロックで、あわせて102ブロックにおいて広域化に関する協議が実施されている(推進計画の組合せとは異なる組合せで検討しているブロックもある。)。
現実に広域化を進めるためには、それぞれのブロックで詳細な検討を行う必要があり、かなりの事務作業を伴うため、協議会等の組織が設けられることが通例である。
この協議会等の事務局に常勤の職員を置いているブロックは、平成22年10月現在17ブロックあり、広域化の実現に向けて大きな推進力となっている。そのうち都道府県を1の消防本部とするブロックは4ブロックあり、県からも協議会事務局へ職員を派遣している。その他のブロックでも、各消防本部や市町村の職員を協議会事務局へ派遣し、広域化の協議を積極的に推進している(図1参照)。

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それぞれのブロックにおいて、広域化実現に向けて抱える問題点は地域事情により様々であるが、各地の状況を見ると、ブロック内の市町村及び消防本部の熱意とともに、都道府県がリーダーシップをとり、関係市町村と十分な協議を重ねているブロックを中心に動きが活発化していると考えられる。

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