平成22年版 消防白書

2 消防団員確保に向けた施策

消防団員は、常備消防の進展、過疎化、少子高齢化の進行、産業・就業構造の変化などに伴い、年々減少し、今では89万人を割る状況にあり、地域防災力の低下が懸念されている。 この危機的な状況に歯止めをかけるため、消防庁では、関係機関と連携して団員確保に向けた様々な取組を実施している。主な取組を以下に紹介する。

(1)消防団員入団促進キャンペーン

消防団員の退団が毎年3月末から4月にかけて多い状況を踏まえ、退団に伴う消防団員の確保の必要性があることから、退団時期の前である1月から3月中を「消防団員入団促進キャンペーン」として位置づけ、関係機関が一体となって消防団員募集についての積極的な広報を全国に展開している。
消防庁では、ポスター、DVD、リーフレットを作成・配布するとともに、全国の女性消防団員募集の取組を加速させるための「女性消防団員入団促進キャンペーンイベント」等を開催している。
各市町村等においても、広報誌、ケーブルテレビ及びホームページ等のあらゆる広報媒体を通じて、活発な広報が行われるとともに、キャンペーン期間中に開催される各種イベント等においてポスター、DVD、リーフレット等を活用した消防団員募集活動が実施されている。

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(2)消防団協力事業所表示制度

全消防団員の約7割が被雇用者であることから、消防庁では、消防団員を雇用する事業所の消防団活動への一層の理解と協力を得るために、平成18年度より、消防団活動に協力している事業所を顕彰する「消防団協力事業所表示制度」を構築し、市町村等にその導入推進を図っている。
本制度は、事業所が消防団に対して市町村等の定める協力を行っている場合に、事業所の申請又は消防団長等の推薦により、協力事業所として認定されると「消防団協力事業所」表示証を社屋等に掲示することができるものである。
また、ホームページなどにも掲載することができ、世間一般に広く広報することが可能である。
この表示証には、市町村等が交付するものと消防庁が交付するものの2種類があり、さらに多くの市町村などに円滑に導入されるよう推進している。

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(3)女性の入団促進

地域における消防防災体制の中核的存在として消防団に期待される役割は拡大しており、消火・防火だけでなく、救助、避難誘導、平常時における防災知識や応急手当の普及啓発など多様で幅広い活動が重視されるようになっている。
このような中、地域コミュニティと深いつながりがあり、きめ細やかな視点を持つ女性消防団員の役割は大きく、その活躍は、消防団全体の活性化、消防団イメージの変化等にとって重要である。
このため、消防庁では、女性団員がいない市町村に対して積極的な入団促進に向けた取組を求めるとともに、「消防団員確保アドバイザー」を派遣し、女性を含めた団員の確保に向けた各団体の取組を積極的に支援している。
また、女性消防団員の活動の活性化を目的として、毎年「全国女性消防団員活性化大会」を開催している。

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(4)消防団の充実強化についての検討会

消防団には、従来の消火に加え、現在は救助、災害時の避難誘導、防災知識の普及啓発、応急手当等の普及指導など多様な活動が期待されていることから、これらに対応する消防団の体制整備等について検討するため、消防防災関係者や学識経験者等からなる検討会を開催した。
大規模災害時における消防団の役割、消防団の多様な活動に対応した訓練・装備、団員が活動しやすい環境づくり等について検討した。

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