3 検討の進行状況
(1)基本周期を延長した場合の安全性の評価
容量1万kl以上のタンクの底部からの流出事故は、過去36年間に22件発生している。大型タンクの底部から流出事故が発生すると、高い液圧や流速によってタンクの基礎が洗掘されることにより底部が大規模に破断するおそれがあること、覚知が遅れて流出が継続するおそれがあることなど、大量流出に至る危険性があることが、国内外の事故事例から明らかになっている。2005年にベルギー国内で発生した事故では、基礎洗掘の結果、タンク(直径54.5m、高さ17m、容量4万kl)が傾斜した(写真2)。仮に、危険物が大量に流出した場合、大規模な火災が発生するおそれがあるほか、地中、河川、海等に流出した危険物を飲料水として摂取したり、有害物質が混入した野菜や魚介類等を摂取したりする可能性がある。更に、過去の石油流出事故では、漁獲高の減少や観光業に対する被害、風評被害、関連事業所の停止なども生じている。これらのことからも、タンクの底部からの流出事故は未然に防ぐことが重要である。

タンク底部からの流出事故の主な要因は次の4つである。
・タンク底部内面から腐食して貫通孔が形成される。
・タンク底部裏面から腐食して貫通孔が形成される。
・繰り返し荷重や腐食によりタンク底部の溶接部が破断する。
・腐食によって耐震性が失われる。
内面から腐食して貫通孔が形成され、事故を起こしたタンクの内面腐食の履歴の調査から、腐食がそれ以前に比べて急に進行したことにより事故に至ったことが分かっている。しかし、腐食がどの程度の速さで進むか、どの部位で進むか等については、解明されていないことも多く、検討会ではいくつかの仮定を用いながら検査周期を延長した場合に事故発生の危険性がどの程度増すのかについて、過去のタンクの検査時のデータを踏まえながら検討しているところである。
(2)検査周期のあり方
タンク底部の裏面の腐食については、保安検査時に板厚を連続的に測定する技術の活用を前提にすると、タンク底部全ての腐食状況を把握することが可能になる。一方、ある回の保安検査からその次の保安検査までのタンク底部の腐食量については、確実性の高い予測方法が確立されていない。そこで、腐食予想量の不確実性に対して安全性を十分に考慮しながら、タンク底部の腐食予測量が小さいと想定されるタンクの要件について検討した後に、過去の腐食の速さを参照して次の開放時期を決めることができないか検討している。
(3)コーティングの耐用年数
タンクのコーティングは、タンクの底部内面の腐食防止に有効であるが、このコーティングが一部でも剥離すると、その部分から急激に内面腐食が進むことが分かっている。現在、最も高い信頼性を有するコーティングは、20年間はその結果を維持することができるとされているが、恒温槽を用いた室内実験、施工後長期間経過した実タンクのコーティングの劣化状況調査等により、コーティングの健全性が維持できる期間(耐用年数)について検討している。