平成23年版 消防白書

3 法令適合の確保

平成14年の消防法の一部改正等を受けて、全国の消防機関において消防法令違反の是正に取り組んだ結果、小規模雑居ビル等の防火対象物に対する違反是正に一定の成果が得られた。しかし、命令の発動件数や法令基準の遵守状況には地域差が見られるなど、引き続き違反是正の推進に努める必要がある。
また、平成21年3月に発生した群馬県渋川市の老人ホーム火災後に、全国の未届有料老人ホームを対象として実施した緊急調査の結果では、当初85.7%の施設において何らかの消防法令違反が見られたが、その後の消防機関による指導等により、平成22年4月のフォローアップ調査時には58.6%、さらに同年10月の調査時には37.9%までに違反が減少してきている。調査の結果、違反施設数が当初の6割減になるなど消防法令違反の是正には一定の進捗が見られるが、一方で、誘導灯の未設置、消防訓練の未実施、防炎物品の未使用、消防用設備等点検結果報告の未報告等を中心に早急に改善を要すべき事項が残されている施設も存在している。
これらのことを踏まえると、管内における火災危険性の高い防火対象物を的確に把握し、その安全対策の不備等を早期に発見し是正させるなど、戦略的な立入検査の実施等をはじめ、関係部局等と積極的に連携し効率的かつ効果的な査察体制を構築することが必要である。また、違反が是正されない防火対象物に対しては、各自治体が定める違反処理基準等に基づき適切な履行期限を設定した警告、措置命令を速やかに発動することなど、より一層の違反是正の徹底を図ることが重要である。
また、防火管理制度は、防火対象物の関係者自らが火災を予防し、火災等による被害を軽減するために、防火管理者を中心とした火災予防体制を構築し、消防計画の作成や当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練など防火管理上必要な業務を行うことを主とした制度であり、これにより関係者が自ら法令適合の確保や防火安全の向上に取り組むことが重要である。しかし、防火管理者が選任されていたとしても十分な防火管理がなされていない状況も散見されるため、防火対象物の管理権原者が、資格を有する者に防火管理上必要な業務について消防法令に定める基準に適合しているかどうかの点検を行わせ、その結果を消防機関に報告する「防火対象物定期点検報告制度」を更に推進し、適切な防火管理が図られるようにする必要がある。

関連リンク

はじめに
はじめに 我が国の消防は、昭和23年に消防組織法が施行され、市町村消防を原則とする自治体消防制度が誕生して以来、関係者の努力の積み重ねにより着実に発展し、国民の安心・安全確保に大きな役割を果たしてきました。 本年は、3月11日に発生した東日本大震災によって、死者・行方不明者併せて約2万人という甚大な...
第1節 本震
第I部 東日本大震災について 第1章 地震・津波の概要 第1節 本震 平成23年3月11日14時46分、三陸沖(北緯38度1分、東経142度9分)の深さ24kmを震源として、我が国観測史上最大のマグニチュード9.0*1の地震が発生した。この地震により宮城県栗原市で震度7を観測したほか、宮城県、福島県...
第2節 余震等
第2節 余震等 気象庁によると、東北地方太平洋沖地震の余震は、岩手県沖から茨城県沖にかけて、震源域に対応する長さ約500km、幅約200kmの範囲に密集して発生しているほか、震源域に近い海溝軸の東側、福島県及び茨城県の陸域の浅い場所で発生している(第1-2-1図)。  これまでに発生した余震は、最大...
第1節 人的被害
第2章 災害の概要 第1節 人的被害 東北地方太平洋沖地震及びその後の余震は、地震の揺れ及び津波により東北地方の沿岸部を中心として、広範囲に甚大な被害をもたらした。 被害の中でもとりわけ人的被害については、死者16,079名、行方不明者3,499名(11月11日時点)という、甚大な被害が発生した(...