[危険物行政の課題]
(1) 東日本大震災を踏まえた危険物施設の地震・津波対策
東日本大震災では3,341の危険物施設が被害を受けた。消防庁では「東日本大震災を踏まえた危険物施設等の地震・津波対策のあり方に係る検討会」を開催し、被災した危険物施設の被害状況の詳細な分析と、危険物施設における地震・津波対策について検討を行っている(詳細は、第I部第4章第7節参照)。
(2) 官民一体となった事故防止対策の推進
危険物施設における火災及び流出事故件数は、平成6年(1994年)頃を境に増加傾向に転じ、依然として高い水準で推移している(第1-2-1図)。

危険物施設における事故を防止するためには、事業所の実態に応じた安全対策や、危険物施設の老朽化等に伴う腐食等劣化をはじめとする事故要因への対策を講じる必要がある。
このような状況を踏まえ、関係業界や消防機関等により構成される「危険物等事故防止対策情報連絡会」において策定された「危険物事故防止アクションプラン」(参照URL:http://www.fdma.go.jp/concern/law/tuchi2304/pdf/230412_ki71.pdf)に基づいた事故に係る調査分析等の情報共有や、各都道府県における事故防止の取組など、官民一体となって事故防止対策を推進していく必要がある。
(3) 科学技術及び産業経済の進展等を踏まえた安全対策の推進
科学技術及び産業経済の進展に伴い、危険物行政を取り巻く環境は常に大きく変化している。
近年では、新たな危険性物質の出現のほか、温室効果ガス排出抑制の取組等によるバイオエタノールを燃料とする自動車や電気自動車の普及等に伴い、危険物の流通形態の変化、危険物施設の多様化、複雑化への対応が求められている。
このような状況に的確に対応するため、新たな危険性物質の早期把握や、新技術の導入等に伴う危険物施設の技術基準の見直し等を引き続き図っていく必要がある。
(4) 屋外タンク貯蔵所の安全対策
大量の危険物を貯蔵し、又は取り扱う屋外タンク貯蔵所において流出事故が発生した場合には、周辺住民の安全や産業及び環境等に対して多大な影響を及ぼすおそれがあることから、その安全対策は重要な課題である。同時に、当該タンクが有する安全性に応じた合理的な技術基準等を設ける必要がある。
近年では、容量1万キロリットル以上の屋外タンク貯蔵所について、当該タンクが適合している位置、構造及び設備の技術基準に応じて保安検査の周期を合理化することや、当該タンクに浮き蓋を設ける場合の安全対策についての検討を行っており、引き続き、屋外タンク貯蔵所の安全を図っていく必要がある。