平成23年版 消防白書

4 安全衛生体制の整備

(1) 安全衛生体制

消防は、労働安全衛生法に規定する安全管理者及び安全委員会の設置が義務付けられていないものの、消防庁においては、公務災害の発生を可能な限り防止するとともに、消防活動を確実かつ効果的に遂行するため、消防本部における安全管理体制の整備について、「消防における安全管理に関する規程」、「訓練時における安全管理に関する要綱」、「訓練時における安全管理マニュアル」及び「警防活動時等における安全管理マニュアル」をそれぞれ示し、体制の整備の促進及び事故防止の徹底を図っている。
現在、組織の安全管理体制のあり方や各安全管理マニュアルをあらためて検証することで、地域の実情や各消防本部の規模に即した安全で効率的かつ効果的な警防活動及び訓練活動の実現を図るため、平成22年5月から「警防活動時及び訓練時における安全管理に係る検討会」を開催し、平成22年度末には「警防活動時における安全管理マニュアル(改訂版)」を取りまとめたところであり、平成23年度中に「訓練時における安全管理マニュアル」及び報告書を取りまとめる予定である。
また、消防職員の衛生管理についても、特に配慮する必要があることから、「消防における衛生管理に関する規程」を示すなどの対応を行っている。

(2) 惨事ストレス対策

消防職員は、火災等の災害現場などで、悲惨な体験や恐怖を伴う体験をすると、精神的ショックやストレスを受けることがあり、これにより、身体、精神、情動又は行動に様々な障害が発生するおそれがある。このような問題に対して、消防機関においても対策を講じる必要があるが、各消防本部においては、情報不足や専門家が身近にいないことなどが課題とされていた。
そこで、消防庁では、消防職員が惨事ストレスにさらされる危惧のある災害が発生した場合、現地の消防本部等の求めに応じて、精神科医等の専門家を派遣し、必要な助言等を行う「緊急時メンタルサポートチーム」を平成15年に創設して、現在に至っている(平成23年10月1日現在、41件の派遣実績がある。)。
また、平成23年3月11日に発生した東日本大震災においては、凄惨な現場も多く、活動にあたった多くの消防職団員に惨事ストレスの発生が危惧されたことから、消防庁としても、被災地を重点対象にチームの専門家を派遣することとし、被災地の消防本部に6件派遣したほか、今回初の取組となるが、(財)日本消防協会と共同で事業を実施し、被災地の消防団に対しても5件派遣したところである(平成23年11月1日現在)。被災地において消防職団員が十分な消防活動を継続できるよう、今後も適切に対応することとしている(詳細は、第I部第3章第2節参照)。
さらに、平成19年度から、消防学校において惨事ストレスに関する授業を担う教職員や消防本部において惨事ストレス対策を担当する消防職員を対象に、惨事ストレスについての基礎的な知識を習得することを目的とした「消防職員の惨事ストレス初級研修」を開催し、各消防本部等における惨事ストレス対策の更なる促進を図っている。

(3) 事故事例の情報収集等

平成15年中に相次いで発生した消防職団員の殉職事故を契機として、消防庁では、今後の再発防止に資するため「消防活動における安全管理に係る検討会」を開催し、安全確保策の充実強化策などについて検討を行い、平成16年11月に報告書を取りまとめた。これを受け、安全管理のための情報共有化方策として、「消防ヒヤリハットデータベース(消防職団員の事故事例の情報収集・提供システム)」の運用を開始した。

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