平成23年版 消防白書

[競争的研究資金による産学官連携の推進]

消防庁では、消防防災科学技術の振興を図り、安心・安全に暮らせる社会の実現に資する研究を、提案公募の形式により、産学官において研究活動に携わる者等から幅広く募り、優秀な提案に対して研究費を助成し、産学官の連携を推進するとともに、革新的かつ実用的な技術を育成するための「消防防災科学技術研究推進制度」(競争的研究資金制度)を平成15年度に創設し、制度の充実を着実に図ってきたところである。特に、平成18年度からは、PD(プログラムディレクター)、PO(プログラムオフィサー)を選任し、類似の研究開発の有無等を含め、研究内容についての審査を行うなど、実施体制を充実・強化するように努めた。また、研究成果報告として、毎年開催される消防技術者会議の中で研究成果の公表を行い、消防・防災技術の向上、消防機関との連携・交流を図るとともに、消防防災科学技術研究開発事例集での成果報告やフォローアップの実施など、当該制度により進められた研究開発がより有効に活用されるよう努めている。
また、公募に係る研究課題については、これまで消防防災全般としていたものに、平成18年度には消火・救助等に関しあらかじめ設定した課題(「テーマ設定型研究開発」枠)を、平成19年度には火災等の災害に対する消防防災活動や予防業務等における現場のニーズを反映した課題(「現場ニーズ対応型研究開発」枠)を新たに設定し、さらに、平成23年度公募時より、消防機関に所属する者が研究グループに必ず参画することとし、消防機関のニーズをより反映した形で火災等の災害現場に密着した課題解決型の研究開発の促進を図っている。
応募課題の審査に当たっては、外部の学識経験者等からなる「消防防災科学技術研究推進評価会」において、消防防災への貢献度、実用化・制度化の可能性、研究方法や研究実施体制の妥当性等を考慮し、優秀と認められる研究課題を選定している。平成23年度の研究助成対象課題としては、新規課題を6件、また、平成21年度、平成22年度からの継続課題を10件採択している(第6-4表、第6-5表)。この制度の下、これまでに79件の研究課題が終了し、数々の研究成果が得られている。特に平成17年度には「水/空気2流体混合噴霧消火システムを用いた放水装置」が、また、平成19年度には「小水量型消火剤の開発と新たな消火戦術の構築」が、そして平成23年度には「高圧水駆動カッターの研究開発」が、それぞれ産学官連携推進会議において産学官連携功労者表彰(総務大臣賞)を受賞した。

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