平成23年版 消防白書

3 研究成果をより広く役立てるために

消防研究センターでは、研究開発によって得られた成果を、全国の消防職団員をはじめとする消防関係者はもとより、より広く利活用されるよう次の活動を行っている。

(1) 一般公開

毎年4月の「科学技術週間」にあわせて、消防研究センターの一般公開を実施しているが、平成23年度は、東日本大震災の発生を受けて中止とした。

(2) 全国消防技術者会議

全国の消防技術者の研究発表、意見交換等の場として昭和28年から「全国消防技術者会議」を毎年開催している。この会議では、各地の消防本部で実施された研究成果の発表、消防機器の開発・改良に関する紹介、火災原因調査の事例紹介などを行ってきた。58回目となる平成22年度の会議は、10月21日及び22日の2日間、都内のニッショーホールにおいて開催した。

(3) 消防防災研究講演会

消防研究センターの研究成果の発表及び消防関係者や消防防災分野の技術者や研究者との意見交換を行うため、平成9年度から「消防防災研究講演会」を開催している。この講演会では毎年特定のテーマを設けており、14回目となる平成22年度の講演会は平成23年1月28日に「石油タンクの保安対策と消火技術」をテーマとして開催した。

(4) 調査技術会議

消防研究センターでは、消防本部が行った火災及び危険物流出等事故に関する事故事例や最新の調査技術を互いに発表することにより、調査技術や行政反映方策に関する情報を共有して消防本部の火災調査及び危険物流出等事故調査に関する実務能力を全国的に向上させることを目的として、「調査技術会議」を開催している。年間を通じて発表された調査事例については、年度末に取りまとめ、全消防本部に配付し、情報共有を図っている。この会議は、全国の主な都市で年間5回程度開催しており、平成22年度は、東京、名古屋、札幌、大阪、福岡の5都市で開催した。平成22年度からは東京会場、大阪会場においては開催日程を一日半に増やし、火災調査編と危険物流出事故調査編を分けて開催し、調査担当者のニーズにきめ細かく対応している。

(5) 消防防災機器の開発等、消防防災科学論文及び原因調査事例に関する表彰

消防防災科学技術の高度化と消防防災活動の活性化に寄与することを目的として、消防職員や一般の方による消防防災機器の開発・改良及び消防防災に関する研究成果のうち特に優れたものを消防庁長官が表彰する制度を平成9年度から実施している。応募の資格に制限はなく誰でも応募することができるため、多くの人に開かれた発表の機会となっている。平成21年度より、従来の募集に加えて、優秀な原因調査事例についても表彰の対象として募集を開始した。
平成22年度は61作品の応募があり、選考委員会による選考の結果、17の受賞作品(優秀賞15作品、奨励賞2作品)が決定され、10月22日に全国消防技術者会議の中で表彰式及び受賞者による作品の発表を行った。

(6) 見学の受入れ

消防研究センターでは、消防職団員や市町村の防災担当者に限らず、近隣の小中学校や自治会、防火協議会など、幅広く施設見学の受入れを行っている。平成22年度は合計で60件1,347名の見学を受け入れた。

関連リンク

はじめに
はじめに 我が国の消防は、昭和23年に消防組織法が施行され、市町村消防を原則とする自治体消防制度が誕生して以来、関係者の努力の積み重ねにより着実に発展し、国民の安心・安全確保に大きな役割を果たしてきました。 本年は、3月11日に発生した東日本大震災によって、死者・行方不明者併せて約2万人という甚大な...
第1節 本震
第I部 東日本大震災について 第1章 地震・津波の概要 第1節 本震 平成23年3月11日14時46分、三陸沖(北緯38度1分、東経142度9分)の深さ24kmを震源として、我が国観測史上最大のマグニチュード9.0*1の地震が発生した。この地震により宮城県栗原市で震度7を観測したほか、宮城県、福島県...
第2節 余震等
第2節 余震等 気象庁によると、東北地方太平洋沖地震の余震は、岩手県沖から茨城県沖にかけて、震源域に対応する長さ約500km、幅約200kmの範囲に密集して発生しているほか、震源域に近い海溝軸の東側、福島県及び茨城県の陸域の浅い場所で発生している(第1-2-1図)。  これまでに発生した余震は、最大...
第1節 人的被害
第2章 災害の概要 第1節 人的被害 東北地方太平洋沖地震及びその後の余震は、地震の揺れ及び津波により東北地方の沿岸部を中心として、広範囲に甚大な被害をもたらした。 被害の中でもとりわけ人的被害については、死者16,079名、行方不明者3,499名(11月11日時点)という、甚大な被害が発生した(...