2 火災原因調査等及び災害・事故への対応
(1) 主な火災原因調査等及び災害・事故対応
消防防災の科学技術に関する専門的知見及び試験研究施設を有する消防研究センターは、消防庁長官の火災原因調査及び危険物流出等の事故原因調査(消防法第35条の3の2及び第16条の3の2)を実施することとされており、大規模あるいは特殊な火災を中心に、全国各地において火災原因調査等を実施している。また、消防本部への技術支援として、原因究明のための鑑識・鑑定・現地調査を消防本部の依頼を受け共同で実施している。
平成22年4月以降に実施した火災原因調査等は第6-3表のとおりである。また、平成22年度中の鑑識は73件、鑑定は26件である。

災害・事故への対応としては、平成23年東北地方太平洋沖地震後に、千葉県内の石油コンビナートで発生し、従業員等6名が負傷したLPGタンク等の爆発・火災において職員を派遣し、消防庁長官の火災原因調査を実施した。また同じく平成23年東北地方太平洋沖地震後に、宮城県内の石油コンビナートで発生した火災及び危険物流出等事故においては、発災時に延焼防止や着火防止の方策などの助言を行うとともに、職員を派遣し、火災原因調査及び危険物流出等事故調査のための現地調査を行うなど消防本部の支援を行った。このほか、平成22年5月に神奈川県横浜市内で発生したガソリンタンクの内部浮き蓋破損事故において、安全確保のためにガソリンを移送する緊急事態対応を行った。
これらの火災原因調査等に加え、消防研究センターでは、消防防災の施策に関わる大規模な災害・事故について、職員を派遣するなどして、被害調査と情報収集を行っている。
(2) 火災原因調査等の高度化に向けた取組
近年の火災・爆発事故は、例えばグループホームのような新しい使用形態の施設での火災やごみをリサイクルして燃料を製造する施設での火災、あるいは、電気用品や燃焼機器などのいわゆる製品火災など、複雑・多様化している。そのため、それらの原因の解明のために必要な調査用資機材の高度化や科学技術の高度利用が求められている。
また、石油類などを貯蔵・取り扱う危険物施設での危険物流出等の事故や火災件数が増加傾向にあり、危険物施設の安全対策上問題となっている。事故が発生した原因を詳細に調査することにより、事故原因を取り除く対策や有効な予防対策を行うことが可能となる。
これらの状況に的確に対応し、効果的な火災・事故原因の解明を行うためには、火災の発生メカニズム、火災拡大の経過、建築物の構造などを解明するための手がかりとなる残留ガスや材料の変形の状況、飛散物の状況などを、現場調査において早期に収集し、高度な分析を行うこと、あるいは、事故原因と考えられる危険物施設の腐食・損傷のメカニズムを解明することが不可欠である。このため、火災や危険物流出等事故の原因調査に役立つ科学技術についての調査研究を行いつつ、サンプル採取技術、計測・分析技術など多岐にわたる技術の高度化を行うことが必要である。
こうしたことから、消防研究センターでは、現場調査に必要な調査用資機材の性能・機能を調査するとともに、サンプルの採取・分析方法、火災前の状態の再現と火災現象の再現の方法、原因の推定又は特定を行う手法等についての研究、火災及び危険物流出等の事故の原因調査に必要な現象究明のための研究にも取り組んでいる。
平成22年度の主な実施内容
火災原因調査の高度化に向けた取組として、多数の火災事案に対し、現場から収去した製品や物質の分析や実験を実施した。行った分析は、油類の成分の定性分析、液体の引火点測定、粉体の元素分析、堆積物の熱分析などである。
富山県で発生した工場火災の原因調査においては、アルミニウム粉体の粒度分布や導電率の測定、集じん装置の導電率、帯電などの測定を実施し発火源の推定を行った。
危険物流出等の事故原因調査の高度化に向けた取組として、4件の事案に対し、現場から収去した危険物施設の破損箇所などの分析を実施した。分析内容は、金属材料や腐食生成物の成分の定性分析、フーリエ変換赤外分光光度計によるゴムパッキンの劣化度の分析や流出危険物の成分分析などである。