平成23年版 消防白書

4 石油コンビナートの被害

東日本大震災により、東北地方から関東地方にかけて複数の石油コンビナート等特別防災区域(以下「特別防災区域」という。)内の危険物施設や特定防災施設等で被害が発生した。

(1) 特別防災区域における主な被害

久慈地区(岩手県久慈市)*4では、津波により屋外タンク貯蔵所や一般取扱所等が破損し、石油約8klが流出した。屋外給水施設や非常通報設備も破損し使用不能となった。甲種普通化学消防車が水没し、オイルフェンス展張船及び油回収船が陸上に打ち上げられ破損した。

*4 地区名の後ろのかっこ書きには、記述している被害が発生した特定事業所が所在している市町村名を記載している。

仙台地区(宮城県多賀城市、七ヶ浜町、仙台市)*4では、津波後に発生した火災により一般取扱所や屋外タンク貯蔵所等が焼損した。この火災により隣接する高圧ガス施設が爆発する危険があったため、付近住民に対して避難指示が出された(3日間)。

*4 地区名の後ろのかっこ書きには、記述している被害が発生した特定事業所が所在している市町村名を記載している。 

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また、複数の特定事業所において、屋外タンク貯蔵所の配管等が津波により破損し、事務所敷地内に数千klの石油が流出した。流出油等防止堤、屋外給水施設や非常通報設備が破損し、一部のものは使用不能となった。大型高所放水車等の車両が水損、オイルフェンス展張船や油回収船が破損した。
鹿島地区(茨城県神栖市、鹿嶋市)*4では、津波及び地震により、屋外タンク貯蔵所や移送取扱所等に被害が発生した。可燃性ガス施設から火災が発生した。流出油等防止堤の亀裂や陥没、屋外給水施設の配管等に被害が発生した。

*4 地区名の後ろのかっこ書きには、記述している被害が発生した特定事業所が所在している市町村名を記載している。

京葉臨海中部地区(千葉県市原市)*4では、液化石油ガスの貯蔵施設において火災が発生し、複数のガスタンクが炎上するとともに、ガスタンクが爆発し近隣の危険物製造所等や指定可燃物施設へ燃え移った。液化石油ガスの貯蔵施設の火災は、出火から10日後に鎮火した。この火災及び爆発により、付近住民に対して避難勧告が出された(約14時間)。

*4 地区名の後ろのかっこ書きには、記述している被害が発生した特定事業所が所在している市町村名を記載している。

上記以外の特別防災区域においても、浮き屋根式屋外タンク貯蔵所の浮き屋根上への石油等の溢流や内部浮き蓋付屋外タンク貯蔵所の浮き蓋の沈下等の被害が発生している。

(2) 特定防災施設及び防災資機材等の被害状況

震度5弱以上又は津波高さ2.0m以上であった15の特別防災区域内の249の特定事業所においては、流出油等防止堤については46の設置事業所中10事業所、屋外給水施設については179の設置事業所中33事業所、非常通報設備については249の設置事業所中39事業所、防災資機材等については消防車両が2事業所(10台)、オイルフェンス展張船等の船舶は6事業所(11隻)、オイルフェンスは16事業所、その他の防災資機材は6事業所で被害が発生している。

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