平成23年版 消防白書

2 津波への対応

地震発生から3分後、広範囲にわたって津波警報(大津波)が発表された。沿岸部の消防本部及び消防団は、津波警報(大津波)の発表と同時に住民への広報活動、避難誘導及び水門閉鎖確認等を開始しているが、これらの活動に従事した消防車両の多くが、津波により被災することとなった。
消防本部は、津波監視の部隊を出動させるとともに、管内状況を把握するため、高台に移動させた消防車両や関係機関との連絡体制の確保等、様々な手段により情報収集に徹したが、津波による通信基地局等への影響や部隊の被災等から必要とする情報が十分に入手できず、かつ消防救急無線の輻輳により活動中の消防隊に情報が届かない状況も発生し、被害状況の把握に苦慮することとなった。
また、消防団については、団員の多くが自らも被災者であったにもかかわらず、地震発生後、津波注意報が発表されると各地区の水門を閉鎖するため、海岸部の現場へ急行し、手動で水門閉鎖を実施するとともに、住民の避難誘導では住宅を1軒1軒回ったり、車両を使用して住民を避難させたりするなど献身的な活動を実施した。
一方、地震直後から避難誘導や広報活動等に当たっていた消防職団員や災害対応のため署所や詰所等へ参集途上の消防職団員が津波により被害を受け、消防職員27名(うち行方不明4名)及び消防団員254名(うち行方不明者12名)の尊い犠牲が生じるとともに、庁舎や消防車両等の多くが損壊するなど人的、物的にも大きな被害を受けながらの活動となった(第3-3-2表~第3-3-5表)。

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多くの対応を求められる中、各消防本部は災害対応を継続させるため、被災した活動拠点を内陸部の署所等に移して災害対応体制を確保するとともに、内陸の消防署から沿岸の消防署へ部隊を増強するなど、津波災害への対応に全力を尽くした。

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