5 救急活動
現場では、津波による浸水のため道路等が使用不能となっており、救急出動要請を受けても災害現場に進入困難な事例がみられた。搬送の受入先である医療機関も被災しており、受入可能な少数の医療機関に搬送が集中することとなった。
現場での救急活動においては、全般的に通信状況が悪く、救急隊は、病院と連絡が取りにくい状況となった。また、119番通報を受けた際に一定の緊急度判定(コールトリアージ)を実施したり、傷病者の緊急度判定(トリアージ)ポストを設置して多数傷病者への対応を行った地域もあったほか、宮城県内の一部の医療機関においては、院内で傷病者の緊急度判定(トリアージ)が実施された。
また、消防庁では、被災地域における救急救命士の活動に関する厚生労働省通知(平成23年3月17日付)を受け、「救急救命士の特定行為の取扱いについて」(同日付消防庁救急企画室長通知)を発出し、通信事情等の悪化により医師による具体的指示が得られない場合には、具体的指示なしで特定行為を実施したとしても、刑法第35条(明治40年法律第45号)に規定する正当業務行為として違法性が阻却され得る旨、都道府県に連絡した。また、「大規模災害時における救急救命士の特定行為に関するプロトコール及び指示体制等について」(同月28日付消防庁救急企画室長通知)を発出し、緊急消防援助隊として被災地で救急活動を行う救急部隊は、派遣元の救急活動に係る手順(プロトコール)に従って活動を行う旨等、都道府県に通知した。
なお、消防庁における東日本大震災に関する実態調査によると、発災後に救急搬送された傷病者等については、地震を直接の原因とするものが700人、津波を直接の原因とするものが499人(平成23年3月11日から17日までの津波被害を受けた青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県及び千葉県の6県における調査結果)であり、平成23年3月11日から6月10日までの主な被災3県の避難所等(注:体育館、学校、公園等で、消防本部において「避難所」と認識しているもの。)への救急出動件数は、それぞれ岩手県974件、宮城県2,625件、福島県985件となっている。