平成24年版 消防白書

[危険物行政の課題]

(1) 官民一体となった事故防止対策の推進

危険物施設における火災及び流出事故件数は、平成6年(1994年)頃を境に増加傾向に転じ、依然として高い水準で推移している(第1-3-1図)。

1-3-1zu.gif

危険物施設における事故を防止するためには、事業所の実態に応じた安全対策や、危険物施設の老朽化等に伴う腐食等劣化をはじめとする事故要因への対策を講じる必要がある。
このような状況を踏まえ、関係業界や消防機関等により構成される「危険物等事故防止対策情報連絡会」において策定された「危険物事故防止アクションプラン」に基づいた事故に係る調査分析等の情報共有や、各都道府県における事故防止の取組など、官民一体となって事故防止対策を推進していく必要がある。

(2) 科学技術及び産業経済の進展等を踏まえた安全対策の推進

科学技術及び産業経済の進展に伴い、危険物行政を取り巻く環境は常に大きく変化している。
近年では、新たな危険性物質の出現のほか、温室効果ガス排出抑制の取組等によるバイオエタノールを燃料とする自動車や電気自動車等の普及等に伴い、危険物の流通形態の変化、危険物施設の多様化、複雑化への対応が求められている。
このような状況に的確に対応するため、新たな危険性物質の早期把握や、新技術の導入等に伴う危険物施設の技術基準の見直し等を引き続き図っていく必要がある。

(3) 屋外タンク貯蔵所の安全対策

大量の危険物を貯蔵し、又は取り扱う屋外タンク貯蔵所において流出事故が発生した場合には、周辺住民の安全や産業及び環境等に対して多大な影響を及ぼすおそれがあることから、その安全対策は重要な課題である。同時に、当該タンクが有する安全性に応じた合理的な技術基準等を設ける必要がある。
近年では、容量1万キロリットル以上の屋外タンク貯蔵所について、当該タンクが適合している位置、構造及び設備の技術基準に応じた保安検査の周期の合理化に係る検討や、浮き蓋を設ける場合の技術上の基準の整備を行っており、引き続き、屋外タンク貯蔵所の安全を図っていく必要がある。

関連リンク

はじめに
はじめに 昭和23年に消防組織法が施行され、市町村消防を原則とする自治体消防制度が誕生して、まもなく65年を迎えようとしています。この間、我が国の消防は、関係者の努力の積み重ねにより着実に発展し、国民の安心・安全確保に大きな役割を果たしてきました。 しかしながら、平成23年3月に発生した東日本大...
第I部 東日本大震災を踏まえた課題への対応
第I部 東日本大震災を踏まえた課題への対応 平成23年3月11日に発生した東日本大震災による被害は、死者・行方不明者約2万人の人的被害、全壊約13万棟、半壊約25万棟の住家被害など、まさに戦後最大の規模となった。 この大災害を受け、消防庁長官の諮問機関である第26次の消防審議会に対し、「広範な地域に...
第1章 地震・津波対策の推進と地域防災力の強化
第1章 地震・津波対策の推進と地域防災力の強化 地震・津波対策については、東日本大震災を踏まえ、平成23年4月に中央防災会議に設置された「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」の報告(平成23年9月28日)にあるように、発生頻度の高い津波のみならず、発生頻度は極めて低いも...
1.防災基本計画の修正と災害対策基本法の改正等
1.防災基本計画の修正と災害対策基本法の改正等 (1) 防災基本計画の修正と地域防災計画の見直し 前述の中央防災会議専門調査会報告を基に、平成23年12月に開催された中央防災会議において、地方公共団体において作成する地域防災計画等の基本となる「防災基本計画」が修正された。従来、津波対策は震災対策の特...