平成24年版 消防白書

2.地方公共団体における震災対策

地方公共団体においては、地域の実情に即した震災対策を推進するため、消防力の充実強化、地域防災計画の策定・見直し、避難場所や避難路・避難階段の整備、地域住民に対する防災知識の普及・啓発、津波対策、物資の備蓄、地震防災訓練等について積極的に取り組んでいる。

(1) 地域防災計画(震災対策編等)の作成状況

平成24年4月1日現在、すべての都道府県において、震災対策に関する事項を地域防災計画の中で、「震災対策編」(又は「地震災害対策編」)として独立の項目を設けて定めている。一方、市区町村(全1,742団体)においては、「震災対策編」(又は「地震災害対策編」)として独立の項目を設けているものが1,340団体、「節」等を設けているものが247団体、「その他の災害等」として扱っているものが42団体となっている。

(2) 震災時等における相互応援協定等の締結状況

大規模な地震は、甚大な被害を広域にわたって及ぼすことが予想されることから、対策を迅速かつ的確に遂行するため、地方公共団体においては、地方公共団体相互間で、震災時等における相互応援協定を締結している。
阪神・淡路大震災を契機に、平成8年(1996年)7月、全国知事会において「全国都道府県における災害時等の広域応援に関する協定」が締結され、全国レベルでの相互応援体制が整備された。東日本大震災では、全国知事会の協定に基づき、被災4県からの要望等により、食料品、生活用品、燃料等の救援物資の提供等を行ったほか、関西広域連合による応援、各種応援協定等に基づく応援が行われた。
東日本大震災の経験を踏まえて、平成24年5月、全国知事会の協定が見直されたほか、各地方公共団体において応援協定の締結等が進められている。
なお、地方公共団体においては、民間機関等との間で、物資、災害復旧、救急救護、放送要請及び輸送などに係る応援協定を締結している(第1-7-5表)。

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(3) 備蓄物資・備蓄倉庫等の状況

災害に備えて地方公共団体は、食料、飲料水等の生活必需品、医薬品及び応急対策や災害復旧に必要な防災資機材の確保を図るため、自ら公的備蓄を行うほか、民間事業者等と協定を結び、震災時に必要な物資の流通在庫を確保することに努めている(第1-7-6表)。

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(4) 震災対策施設等の整備事業

平成23年度において、震災対策施設等の整備促進のため、都道府県が実施した事業費は1,028億円、また、市区町村が実施した事業費は663億円である(第1-7-7表)。

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(5) 震災訓練・震災対策啓発事業の実施状況

平成23年度においては、33都府県と813市区町村が総合防災訓練を実施している。(第1-7-8表、第1-7-9表)。

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(6) 津波対策の実施状況

大規模な地震が発生した場合、沿岸地域では津波の発生が予想されることから、地方公共団体においては各種の津波対策が進められている。
平成24年4月1日現在、海岸線を有する市区町村は646団体であり、その中で過去の地震の記録や海岸の地形等を踏まえ、津波浸水予想地域を定めている団体492団体、地域防災計画へ記載している団体379団体、津波災害を想定した避難地が12,110箇所定められている。
また、緊急時に住民が迅速・的確に行動する必要があることから、津波を想定した訓練が平成23年度は323団体で実施されている。

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