平成26年版 消防白書

2.火災による死者の状況

(1) 火災による死者の状況

平成25年中の「火災による死者数」は1,625人で、そのうち放火自殺者、放火自殺の巻き添えとなった者及び放火殺人による死者(以下「放火自殺者等」という。)を除いた死者数は1,278人と前年(1,323人)に比べ45人(3.4%)減少しており、1,546人を記録した平成17年以降おおむね減少傾向となっている。また、負傷者数は6,858人と前年(6,826人)に比べ32人(0.5%)増加したものの、8,850人を記録した平成17年以降減少傾向となっている(第1-1-3図)。

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ア 1日当たりの火災による死者数は4.5人

平成25年中の1日当たりの火災による死者数は4.5人となっている(第1-1-2表)。

イ 火災による死者数は、人口10万人当たり1.27人

火災による死者の状況を都道府県別にみると、神奈川県が94人で最も多く、次いで千葉県が90人、東京都が87人の順となっている。一方、死者が最も少ないのは、鳥取県、島根県、徳島県で9人となっている。
これを人口10万人当たりの火災による死者数で比較すると、最も多いのは青森県で2.77人、最も少ないのは東京都で0.66人となっている。なお、平成25年中の人口10万人当たりの火災による死者数は、全国平均で1.27人となっている(第1-1-8表)。

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ウ 火災による死者は1月から3月及び11月、12月に多く発生

平成25年中の火災による死者発生状況を月別にみると、火気を使用する機会が多い1月から3月まで及び11月、12月の火災による死者数の平均は月に194.6人(年間の月平均は135.4人)に上っており、この5か月間に年間の火災による死者数の59.9%に当たる973人の死者が発生している(第1-1-4図、附属資料13)。

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エ 22時から翌朝7時までの時間帯の火災で多くの死者が発生

平成25年中の火災100件当たりの死者発生状況を時間帯別にみると、22時から翌朝7時までの時間帯で多くなっており、同時間帯の火災100件当たりの死者数の平均は6.6人で、全時間帯の平均3.4人の1.94倍となっている(第1-1-5図、附属資料14)。

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オ 死因は火傷、次いで一酸化炭素中毒・窒息が多い

平成25年中の火災による死因は、火傷が573人(35.3%)と最も多く、次いで一酸化炭素中毒・窒息が493人(30.3%)となっている(第1-1-9表)。

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カ 逃げ遅れによる死者が52.4%

死亡に至った経過をみると、平成25年中の火災による死者数(放火自殺者等を除く。)1,278人のうち、逃げ遅れが670人で52.4%を占めている。その中でも「避難行動を起こしているが逃げきれなかったと思われるもの。(一応自力避難したが、避難中、火傷、ガス吸引により、病院等で死亡した場合を含む。)」が231人と最も多く、全体の18.1%を占めている(第1-1-6図、附属資料15)。

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キ 高齢者の死者が68.6%

火災による死者数(放火自殺者等を除く。)を年齢別にみると、65歳以上の高齢者が877人(68.6%)を占めており、特に81歳以上が407人(31.8%)となっている(第1-1-7図、附属資料16)。

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また、年齢階層別の人口10万人当たりの死者数(放火自殺者等を除く。)は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、特に81歳以上の階層では、全年齢層における平均1.00人に比べ4.96倍となっている。

ク 放火自殺者等は、火災による死者の総数の21.4%

平成25年中の放火自殺者等は347人となっており、これは、火災による死者の総数(1,625人)の21.4%(前年23.1%)を占めている(第1-1-3図)。
また、これを年齢別・性別にみると、特に男性の61歳~65歳の階層が38人と最も多くなっている(第1-1-8図、附属資料16)。

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(2) 建物火災による死者の状況

ア 建物火災による死者は、死者総数の77.2%

平成25年中の建物火災による死者数は1,254人で、火災による死者の総数に対する比率は77.2%となっている。
また、建物火災による負傷者は5,717人で、火災による負傷者の総数に対する比率は83.4%となっており、火災による死傷者の多くが建物火災により発生している(第1-1-10表)。

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イ 建物火災のうち、全焼による死者は741人

平成25年中の建物火災による死者1,254人について、建物焼損程度別の死者発生状況をみると、全焼の場合が741人で59.1%を占めている(第1-1-9図、附属資料18)。

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ウ 建物火災による死者の87.7%が住宅で発生

平成25年中の建物火災による死者1,254人について、建物用途別の発生状況をみると、住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅をいう。以下本節において、ことわりのない限り同じ。)での死者は1,100人で、建物火災による死者の87.7%を占めている(第1-1-10図、附属資料22)。

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また、死因別では一酸化炭素中毒・窒息による死者が479人(38.2%)で最も多く、次いで、火傷による死者が472人(37.6%)となっている(第1-1-11図、附属資料19)。

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(3) 住宅火災による死者の状況

ア 住宅用火災警報器の普及とともに住宅火災の死者は減少

平成16年の消防法改正により、設置が義務付けられた住宅用火災警報器の設置率は、平成26年6月1日時点で全国で79.6%となっている(第1-1-26表)。
そのような中、平成25年中の住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)は997人であり、前年(1,016人)と比較し19人の減少(1.9%減)で、1,220人を記録した平成17年と比較すると223人の減少となっている。
また、65歳以上の高齢者は703人で、前年に比べ26人(3.8%)の増加となっており、住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)の70.5%を占めている(第1-1-12図)。

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イ 死者発生は高齢者層で著しく高い

平成25年中の住宅火災による年齢階層別の人口10万人当たりの死者発生数(放火自殺者等を除く。)は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、特に81歳以上の階層では、全年齢階層における平均0.78人に比べ5.2倍となっている(第1-1-13図)。

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ウ たばこを発火源とした火災による死者が14.1%

平成25年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を発火源別にみると、たばこによるものが141人(14.1%)で最も多く、次いでストーブ103人(10.3%)、電気器具77人(7.7%)の順(不明を除く。)となっている(第1-1-14図)。

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エ 寝具類に着火した火災での死者が多い

平成25年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を着火物(発火源から最初に着火した物)別にみると、寝具類に着火した火災による死者が112人(11.2%)で最も多く、次いで衣類66人(6.6%)、屑類47人(4.7%)の順(不明を除く。)となっている(第1-1-15図)。

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オ 0時から6時までの時間帯で多くの死者が発生

平成25年中の住宅火災の死者(放火自殺者等を除く。)を時間帯別にみると、0時から6時までの時間帯の平均は116.7人で、全時間帯の平均83.1人の1.40倍となっている(第1-1-16図、附属資料20)。

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カ 逃げ遅れによる死者が56.4%と最も多い

平成25年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を死に至った経過の発生状況別にみると、逃げ遅れが562人(全体の56.4%)と最も多くなっている(第1-1-17図)。

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