平成26年版 消防白書

[危険物行政の課題]

(1) 官民一体となった事故防止対策の推進

危険物施設における火災及び流出事故の合計件数は、平成6年(1994年)頃を境に増加傾向に転じ、依然として高い水準で推移している(第1-2-1図)。
危険物施設における事故を防止するためには、事業所の実態に応じた安全対策や、危険物施設の経年劣化をはじめとする事故要因への対策を講じる必要がある。
また、近年の人的被害等深刻な被害を生じる事故が起きていることを踏まえ、石油コンビナート等における災害防止対策検討関係省庁連絡会議の検討結果に基づき、平成26年5月に、「石油コンビナート等における災害防止対策検討関係省庁連絡会議報告書」が取りまとめられ、今後の事故防止対策の取組の基本方針として策定された「危険物等事故防止安全憲章」とともに公表された。
このような状況を踏まえ、関係業界や消防機関等により構成される「危険物等事故防止対策情報連絡会」において「石油コンビナート等における災害防止対策検討関係省庁連絡会議報告書」や「危険物等事故防止安全憲章」の中で提案されている取組事項を確実に実施していくことを主眼に置きつつ、引き続き地震・津波対策の推進を図る観点で策定された「平成26年度危険物事故防止アクションプラン」に基づいた事故に係る調査分析等の情報共有や、各都道府県における事故防止の取組など、官民一体となって事故防止対策を推進していく必要がある。

(2) 科学技術及び産業経済の進展等を踏まえた安全対策の推進

科学技術及び産業経済の進展に伴い、危険物行政を取り巻く環境は常に大きく変化している。
近年では、新たな危険性物質の出現のほか、天然ガス自動車、燃料電池自動車、電気自動車等の普及等に伴い、危険物の流通形態の変化、危険物施設の多様化、複雑化への対応が求められている。
このような状況に的確に対応するため、新たな危険性物質の早期把握や、新技術の導入等に伴う危険物施設の技術基準の見直し等を引き続き図っていく必要がある。

(3) 屋外タンク貯蔵所の安全対策

大量の危険物を貯蔵し、又は取り扱う屋外タンク貯蔵所において流出事故が発生した場合には、周辺住民の安全や産業、環境等に対して多大な影響を及ぼすおそれがあることから、その安全対策は重要な課題である。同時に、当該タンクが有する安全性に応じた合理的な技術基準等を設ける必要がある。
近年では、容量1万キロリットル以上の屋外タンク貯蔵所について、当該タンクが適合している位置、構造及び設備の技術基準に応じた保安検査の周期の合理化に係る検討を行っているほか、浮き蓋を設ける場合の技術上の基準の整備を行った。
また、屋外タンク貯蔵所では、過去の地震動を踏まえ、長周期地震動や液状化等への対策を進めてきており、「東日本大震災を踏まえた危険物施設等の地震・津波対策のあり方に係る検討会」において、屋外タンク貯蔵所の地震に対する技術基準は、現時点で妥当な基準であるとされたが、中央防災会議等において、南海トラフ地震等の想定地震動の検討も進んでおり、従来の想定を上回る大規模な地震動に対する屋外タンク貯蔵所の安全性の評価・分析について平成26年度から3ヵ年の予定で検討を行うこととしている。

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