平成26年版 消防白書

6.災害別対策

(1) 洪水

流域に降った大量の雨水が河川に流れ込み、特に堤防が決壊すると、流域では大規模な洪水被害が発生する。
一方、近年、短時間に局地的に激しい雨が降り注ぎ、山間部や都市部の中小河川に一気に流れ込み、平常時には川遊びができるような穏やかな河川が増水して勢いを増し、氾濫して流域に甚大な被害をもたらす事例が各地で発生している。平成26年7月の台風第8号や8月の台風第12号及び台風第11号による大雨、また、8月15日から20日にかけての大雨では、局地的に降った非常に激しい雨等により、河川が増水し、全国各地で浸水被害が生じた。
特に洪水被害への対策として、消防庁では通知等により、市町村に対して以下の取組について要請している。
〔1〕 大雨、洪水等の警報や、雨量、河川水位に関する情報などの防災気象情報を的確に収集し早い段階から住民に伝達するとともに、避難勧告等は時期を失することなく早めに発令・伝達すること。
〔2〕 地下空間の施設管理者と連携し、地下空間での豪雨及び洪水に対する危険性について事前の周知を図り、浸水対策及び避難誘導等安全体制を強化すること。洪水時には迅速かつ的確に情報を伝達し、利用者の避難のための措置等を講じること。
〔3〕 大雨後の河川増水時、河川管理者と連携し、水辺利用者に対して速やかに安全な場所へ避難するよう注意を促すなど適切に対応すること。また、水難事故防止について啓発すること。

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(2) 土砂災害

大雨の際には、土石流、地すべり、がけ崩れなどの土砂災害に厳重に警戒する必要がある。平成25年6月から8月の大雨、平成25年台風第26号や平成26年台風第8号、第11号、第12号による大雨、8月15日から20日にかけての大雨では、多数の土砂災害が発生し、多数の死者・行方不明者、孤立集落を出す被害となった。
土砂災害対策に関しては、消防庁では通知等により、市町村に対して主に以下の項目について要請している。
〔1〕 特に要配慮者関連施設については、当該施設の利用者の円滑な避難が行われるよう土砂災害に関する情報の伝達方法を定めること。
〔2〕 例年、急傾斜地崩壊危険区域、地すべり防止区域等の指定区域以外の箇所においても土砂災害が発生していることから、従来危険性が把握されていなかった区域もあわせて再点検を行うこと。
さらに、平成26年9月には、同年8月20日に発生した広島市の土砂災害を踏まえ、関係府省庁において、「土砂災害など重大な自然災害に対する主な被害防止策」が取りまとめられ、消防庁では、都道府県及び市町村に対し、土砂災害危険箇所等の国民に対する緊急周知及び行政の体制整備に係る緊急点検、深夜を含めた災害リスク情報の的確な提供を要請している。

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(3) 高潮

平成11年(1999年)9月に熊本県不知火海岸で高潮により12人の死者が発生したこと等を踏まえ、消防庁では、平成13年3月に内閣府、農林水産省、国土交通省等と共同で、高潮対策強化マニュアルを策定した。

(4) 竜巻・突風

竜巻や突風による災害は全国各地で発生している。
平成24年5月6日に、茨城県、栃木県及び福島県において複数の竜巻が発生し、死傷者や多くの住家被害が発生する被害となった。
この竜巻災害を受けて、消防庁では同年5月に、地元気象台などとも連携の上、気象情報に十分留意し、竜巻等突風災害に係る対応についての住民に対する周知、啓発等に努められるよう、通知や会議等において要請した。また、政府においては、関係府省庁からなる「竜巻等突風対策局長級会議」(事務局:内閣府)が開催され、8月に竜巻等突風に係る住民、市町村及び国の今後の取組等について報告が取りまとめられた。これを受けて、消防庁では同報告に留意の上、竜巻等突風対策に取り組むよう要請した。
また、平成25年においても、埼玉県越谷市等で竜巻等突風により大きな被害が発生したことにかんがみ、竜巻等突風対策局長級会議が開催され、予測情報の改善、災害情報等の伝達のあり方、防災教育の充実、建造物の被害軽減方策(窓ガラス対策等)、被災者支援の取組等について報告が取りまとめられた。消防庁及び気象庁では、平成25年4月より栃木県及び茨城県、平成26年4月より関東地方一円において、消防本部に寄せられる竜巻等突風の発生に関する通報の内容を気象台に情報提供する試行的な取組を実施している。

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