平成26年版 消防白書

第5節 風水害対策

[風水害の現況と最近の動向]

1.平成25年中の主な風水害

平成25年中の風水害による人的被害は、死者70人(前年47人)、行方不明者7人(同3人)、負傷者620人(同950人)、住家被害は、全壊252棟(同538棟)、半壊2,218棟(同3,145棟)、一部破損7,768棟(同7,922棟)となっている(第1-5-1表、第1-5-1図)。

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また、平成25年中に発生した台風の数は、平年より多い31個(昭和56年から平成22年までの30年間の平均25.6個)であり、このうち日本列島へ上陸した台風の数は2個(同平均2.7個)と平年並みであった。
平成25年中の主な風水害については以下のとおり(第1-5-2表)。

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7月26日から8月3日にかけて、日本付近に暖かく湿った空気が流れ込んだことにより、西日本から北日本の広い範囲で大気の状態が非常に不安定となり、局地的に非常に激しい雨が降った。特に7月28日には、島根県と山口県で、午前中を中心に記録的な大雨となり浸水被害や土砂災害が発生した。島根県及び山口県の大雨による人的被害は死者2人(山口県)、行方不明者2人(島根県1人、山口県1人)、負傷者11人となっており、このほかに、土砂災害による住家や道路の被害、浸水被害が多数発生した。
県外からの応援活動として、島根県へは、鳥取県防災航空隊及び広島市消防航空隊、山口県へは、広島県防災航空隊、福岡市消防航空隊及び北九州市消防航空隊がそれぞれ出動し、救助活動等を実施した。
消防庁では、7月29日午前8時00分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置し情報収集体制の強化を図った。

8月9日に東北地方に日本海から暖かく湿った空気が流れ込み、大気の状態が非常に不安定となった。このため秋田県、岩手県を中心に猛烈な雨が降り、秋田県仙北市で発生した土石流により6人が死亡する被害が発生し、岩手県では2人が死亡する被害が発生したほか、負傷者12人となっている。また、土砂災害による住家や道路の被害、浸水被害が多数発生した。
県外からの応援活動として、岩手県へ宮城県防災航空隊が出動し、情報収集活動を実施した。
消防庁では、8月9日午前8時24分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置し情報収集体制の強化を図った。

9月中旬に台風第18号が日本列島に上陸し、四国から北海道にかけての広い範囲で大雨となった。気象庁は、数十年に一度の降雨量になると予想されたため、9月16日午前5時5分、京都府、滋賀県及び福井県に対し、8月30日の運用開始後初となる大雨特別警報を発表し、最大級の警戒を呼びかけた。また、中国地方から北海道にかけて各地で暴風となり、和歌山県、三重県、栃木県、埼玉県、群馬県、宮城県及び北海道においては竜巻等の突風も発生した。
台風第18号による人的被害は、死者6人(岩手県1人、福島県1人、福井県1人、三重県2人、滋賀県1人)、行方不明者1人(兵庫県)、負傷者143人となっており、このほかに、土砂災害による住家や道路の被害、浸水被害が多数発生した。
消防庁では、9月16日午前5時15分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置し情報収集体制の強化を図った。

10月中旬に台風第26号が日本に接近し、その影響で西日本から北日本の広い範囲で暴風、大雨となった。特に東京都大島町では、1時間に100mm以上の猛烈な雨が数時間降り続き、24時間の降水量が800mmを超えた。その影響で土石流が発生し、東京都大島町では、死者36人、行方不明者3人の被害が発生した。このほかに、死者4人(千葉県1人、東京都1人、神奈川県1人、静岡県1人)の被害が発生した。また、負傷者は130人となっている。
伊豆大島土砂災害では、東京都知事から消防庁長官に対して緊急消防援助隊の派遣要請が行われ、消防庁では直ちに消防庁長官から1都4県(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県及び静岡県)の緊急消防援助隊に出動を要請した。緊急消防援助隊は、延べ479隊2,055人が出動し、大島町消防本部、大島町消防団、都内応援の東京消防庁と一体となって、多数の倒壊家屋や土砂からの救助活動を展開した。
消防庁では、10月15日午後6時00分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置し情報収集体制の強化を図るとともに、甚大な被害状況から16日午前10時00分に消防庁次長を長とする「消防庁災害対策本部(第2次応急体制)」に改組した。

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