平成26年版 消防白書

2.平成26年1月から10月までの主な風水害(第1-5-3表)

(1) 台風第8号及び梅雨前線の影響に伴う7月6日からの大雨等による被害等の状況

1-5-3b.gif

7月4日にマリアナ諸島付近で発生した台風第8号は、発達しながら日本の南海上を北上し、気象庁は、数十年に一度の強度の台風及び数十年に一度の降雨量になると予想されたため、7日から9日にかけて沖縄県宮古島地方と沖縄本島地方に暴風、波浪、高潮、大雨の特別警報を発表し、最大級の警戒を呼び掛けた。
台風第8号は、7月8日には大型で非常に強い勢力を保ったまま沖縄本島と宮古島の間を通過した後、北上した。九州の西海上で進路を東寄りに変え、10日の午前7時前に鹿児島県阿久根市付近に上陸後、そのまま九州を通過し、本州の太平洋沿岸を東に進んだ。
この台風の接近・通過に伴い、沖縄本島地方では記録的な大雨になったほか、台風周辺の湿った南風と梅雨前線の影響で、台風から離れた地域でも局地的に猛烈な雨が降り、浸水被害や土砂災害による被害が発生した。7月9日には長野県南木曽町読書にある木曽川支流の梨子沢で土石流が発生し、12歳の男子1人が死亡するなどの被害が発生した。
台風第8号等による人的被害は死者3人(福島県1人、長野県1人、愛媛県1人)、負傷者67人となっているほか、土砂災害による住家や道路の被害、浸水被害が多数発生した。
消防庁では、7月7日午前9時00分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置し情報収集体制の強化を図った。

(2) 台風第12号及び台風第11号に伴う大雨等による被害等の状況

7月29日にフィリピンの東海上で発生した台風第12号は、勢力を強めて大型の台風となり、7月31日から8月1日にかけて南西諸島に接近し、沖縄本島の西側を抜けた後、8月1日には暴風域を伴いながら鹿児島県奄美群島の徳之島の西北西を通過した。
この台風や南から暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、西日本の広範囲で大雨となった。8月1日からの積算雨量は3日に高知県で1,000mm、徳島県で600mmを越え、60万人以上を対象に避難勧告・避難指示が発令された。
また、7月29日にマリアナ諸島付近で発生した台風第11号は、比較的ゆっくりとした速度で北上し、8月10日午前6時過ぎ、強い勢力を保ったまま高知県安芸市付近に上陸した。その後、次第に速度を上げながら四国・近畿地方を通過し日本海を北上した。
この台風の影響で、西日本の太平洋側と東海地方を中心に1時間に80mm以上の猛烈な雨が降り、8月9日午後5時20分、三重県に対して大雨特別警報が発表され、約60万人を対象に避難指示が、約150万人を対象に避難勧告が発令された。
台風第12号及び台風第11号による人的被害は死者6人(愛知県1人、和歌山県1人、島根県1人、山口県2人、徳島県1人)、負傷者92人となっているほか、土砂災害による住家や道路の被害、浸水被害が多数発生した。
消防庁では、8月3日午前11時00分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置し情報収集体制の強化を図った。

(3) 8月15日から8月26日にかけての大雨等による被害等の状況

8月15日から17日にかけて、本州付近に前線が停滞し、前線に向かって南から暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、東日本と西日本では広い範囲で大気の状態が非常に不安定になった。このため、局地的に雷を伴って非常に激しい雨が降り、8月16日と17日の2日間に降った雨の量が、京都府福知山市や岐阜県高山市等で観測史上1位を更新する等、近畿、北陸、東海地方を中心に大雨となった。
その後も、前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、中国地方や九州北部地方を中心に大気の状態が非常に不安定となった。8月20日には、広島県で1時間に約120mmの猛烈な雨が降り、広島市では大規模な土砂災害が発生した。
また、8月23日から24日にかけては、北海道利尻富士町及び礼文町で50年に一度の記録的な大雨となった。

ア 8月15日から8月26日にかけての大雨等における被害等の状況(イ 8月19日からの大雨等による広島県における被害等の状況を除く)

8月16日から17日にかけては、京都府福知山市や岐阜県高山市等で48時間降水量が観測史上1位を更新する等、近畿、北陸、東海地方を中心に記録的な大雨となり、石川県羽咋市及び兵庫県丹波市では、土砂災害が発生した。また、北海道礼文町では、8月23日から24日にかけて記録的大雨が降り、土砂災害が発生した。
8月15日から8月26日にかけての大雨等による人的被害は、死者8人(北海道2人、石川県1人、京都府2人、兵庫県2人、福岡県1人)、負傷者7人となっているほか、土砂災害による住家や道路の被害、浸水被害が多数発生した。
消防庁では、8月17日午後1時00分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置し情報収集体制の強化を図った。

イ 8月19日からの広島県における大雨等による被害等の状況

日本付近に前線が停滞し、暖かく非常に湿った空気が流れ込み、8月19日夜から20日明け方にかけて、広島市を中心に猛烈な雨となり、安佐北区三入では1時間降水量101.0mm、3時間降水量217.5mmを観測するなど観測史上最大の値を記録した。この影響により、広島市安佐北区及び安佐南区では8月20日未明に166箇所で土砂災害が発生し、多くの死者が出るなど甚大な被害となった。
8月20日午後0時30分、広島県知事から消防庁長官に対して緊急消防援助隊の派遣要請が行われ、消防庁では直ちに消防庁長官から、岡山県、鳥取県、高知県、大阪府に対して緊急消防援助隊の出動を要請した。その後、8月21日午後7時30分には、救助体制を強化するため、新たに消防庁長官から島根県、山口県、愛媛県に対して緊急消防援助隊の出動を要請し、8月20日から9月5日までの17日間で延べ694隊2,634人が救助活動等を行った。
広島市における土砂災害による人的被害は、死者74人(広島市安佐南区68人、安佐北区6人)、負傷者44人となっているほか、土砂災害による住家や道路等の被害が多数発生した。
なお、安佐北区では、消防職員1人が住宅崩壊現場で住民の救助活動中、再崩落した土砂に巻き込まれ死亡している。
消防庁では、8月20日午前4時30分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置し情報収集体制の強化を図るとともに、甚大な被害状況から、午前8時30分には国民保護・防災部長を長とする「消防庁災害対策本部(第2次応急体制)」に改組した。さらに、8月22日午前9時00分には、災害対策基本法第24条第1項に基づき、政府に「平成26年(2014年)8月豪雨非常災害対策本部」が設置されたことを受け、消防庁の体制を消防庁長官を長とする「消防庁災害対策本部(第3次応急体制)」に改組した。

(4) 台風第18号に伴う大雨による被害等の状況

9月29日午後3時にトラック諸島近海で発生した台風第18号は、発達しながら日本の南海上を北上し、大型で非常に強い勢力で南大東島の近海を通って九州の南海上に達した。その後、進路を東寄りに変え、強い勢力を維持したまま潮岬の南を通って、10月6日午前8時過ぎに静岡県浜松市付近に上陸した。台風と本州付近に停滞した前線の影響で、東日本の太平洋側を中心に大雨となった。また、沖縄・奄美と西日本・東日本の太平洋側を中心に暴風となり、猛烈なしけとなった。
この台風の影響で、静岡県では1時間に80mm以上の猛烈な雨が降ったところがあり、神奈川県や三重県でも1時間に70mm以上の大雨が降り、約360万人以上を対象に避難勧告・避難指示が発令された。
台風第18号による人的被害は、死者6人(茨城県2人、千葉県2人、神奈川県2人)、行方不明者1人(神奈川県)、負傷者72人となっているほか、土砂災害による住家や道路の被害、浸水被害が多数発生した。
消防庁では、10月5日午後0時00分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置し情報収集体制の強化を図った。

(5) 台風第19号に伴う大雨・暴風等による被害等の状況

10月4日午前3時にマーシャル諸島付近で発生した台風第19号は、発達しながらフィリピンの東海上を西に進み、8日午前3時から午後9時にかけて勢力が最大(中心気圧900hPa)となった。フィリピンの東海上で進路を北に変えて沖縄の南海上を北上し、10月12日午前0時半頃に大型で非常に強い勢力で沖縄本島付近を通過し、13日には東シナ海で進路を北東に変え、13日午前8時半頃鹿児島県枕崎市付近、13日午後2時半頃に高知県宿毛市付近、13日午後8時過ぎに大阪府泉佐野市付近にそれぞれ上陸した。
この台風により、沖縄・奄美と西日本から北日本にかけての太平洋側を中心に大雨や暴風となり、海上は猛烈なしけとなった。
台風第19号による人的被害は、死者3人(鳥取県1人、愛媛県2人)、負傷者96人となっているほか、土砂災害による住家や道路の被害、浸水被害が多数発生した。
消防庁では、10月11日午後5時00分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置し情報収集体制の強化を図った。

関連リンク

平成26年版 消防白書(PDF版)
平成26年版 消防白書(PDF版) 平成26年版 消防白書  はじめに 今後発生が予測される大規模災害への対応と消防防災体制の強化 ~東日本大震災の教訓を生かす~  特集1 緊急消防援助隊の機能強化  特集2 消防団等地域防災力の充実強化  特集3 最近の大規...
はじめに 今後発生が予測される大規模災害への対応と消防防災体制の強化 ~東日本大震災の教訓を生かす~
はじめに 今後発生が予測される大規模災害への対応と消防防災体制の強化 ~東日本大震災の教訓を生かす~ 平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、死者・行方不明者が約2万名、住家における全壊が約13万棟、半壊が約27万棟に被害が及び、それは戦後最大の自然災害の脅威とも呼べるものであった(1表)。...
特集1 緊急消防援助隊の機能強化
特集1 緊急消防援助隊の機能強化 東日本大震災では、発災日から88日間にわたり、延べ約3万1,000隊、約11万人の緊急消防援助隊が消防・救助活動に尽力し、5,064人の人命を救助した。 南海トラフでは、過去100年から150年程度の周期でマグニチュード8クラスの海溝型地震が発生しており、東海、東南...
1.南海トラフ地震、首都直下地震等に備えた大幅増隊
1.南海トラフ地震、首都直下地震等に備えた大幅増隊 東日本大震災を上回る被害が想定される南海トラフ地震等に備え、大規模かつ迅速な部隊投入のための体制整備が不可欠であることから、平成30年度末までの目標登録隊数をおおむね4,500隊規模からおおむね6,000隊規模に増強することとしている(特集1-1表...