平成26年版 消防白書

2.火山災害対策の現況

(1) 国における火山災害対策

我が国には110の活火山が存在している。火山災害に結びつく危険性が高い火山現象は、噴石、火砕流、融雪型火山泥流、溶岩流、降灰、降灰後の土石流、火山ガス、山体崩壊及びそれに伴う津波など多岐にわたる。
火山災害に対しては、活動火山対策特別措置法等に基づいて諸対策が講じられており、消防庁では火山を有する地域の市町村に対して、避難施設の整備に要する費用の一部に国庫補助を行っている。
さらに、平成12年(2000年)の有珠山及び三宅島の火山災害を踏まえ、消防庁は平成13年から最新の火山防災に関する情報や関係団体で有する情報等を共有していくことを目的とした「火山災害関係都道県連絡会議」を開催した。平成24年からは各地域における火山防災対策の取組の現状や課題等について、意見交換等を通じて共有することにより、火山防災協議会の設置の促進や運営の活性化を図ることを目的とした「火山防災協議会等連絡・連携会議」(事務局:内閣府、消防庁、国土交通省、気象庁)を開催している。
こうした中、火山災害の一層の軽減を図るため、平成19年12月に気象業務法の一部が改正され、重大な火山災害の起こるおそれのある旨を警告する「噴火警報」等の発表が開始された。加えて、火山活動の状況を関係地方公共団体や住民、登山者・入山者等がとるべき防災対応等に応じて5段階に区分した「噴火警戒レベル」が全国30火山(平成26年7月現在)を対象に運用されており(第1-8-1表)、今後その他の火山についても、噴火警戒レベルに応じた防災対応について、後述する火山防災協議会における共同検討が進められる予定である。

1-8-1b.gif

また、内閣府、消防庁、国土交通省及び気象庁では、平成20年3月、より効果的な火山防災体制を構築するための火山情報と避難体制について検討した結果を「噴火時等の避難に係る火山防災体制の指針」として取りまとめた。指針では、関係都道県及び関係市町村に対して、平常時における協議会等の開催、噴火時等の異常発生時における合同対策本部の設置、具体的で実践的な避難計画の策定、住民等への啓発等、指針を踏まえた火山防災対策の推進を要請している。
平成23年1月以降の霧島山(新燃岳)の噴火の際には、関係県・市町、国の出先機関、火山の専門家等からなる「コアメンバー会議」が開催され、住民の避難計画、土石流対策、降灰対策計画等についての検討や情報共有が実施された。
これらを踏まえ、平成23年12月の防災基本計画の改定では、以下の事項が新たに記述された。
<1> 都道府県は、国、市町村、公共機関、専門家等と連携し、噴火時等の避難等を検討するための「火山防災協議会」を設置するなど体制を整備するよう努める。
<2> 国及び地方公共団体は、火山防災協議会における検討を通じて、噴火シナリオの作成、火山ハザードマップの整備を推進する。
<3> 地方公共団体は、火山防災協議会における検討を通じて、噴火警戒レベルの導入に向けての防災対応や避難対象地域の設定を行い、具体的で実践的な避難計画を作成し、訓練を行う。
平成23年度においては、霧島山(新燃岳)の噴火の際の知見も踏まえ、「火山防災対策の推進に係る検討会」(事務局:内閣府)において「具体的で実践的な避難計画策定の手引」及び「火山防災マップ作成指針骨子」が取りまとめられた。
平成24年度においては、「火山防災マップ作成指針ワーキンググループ」(事務局:内閣府、消防庁、国土交通省、気象庁)において「火山防災マップ作成指針」が取りまとめられた。
平成25年度においては、「広域的な火山防災対策に係る検討会」(事務局:内閣府、消防庁、国土交通省、気象庁)において「大規模火山災害対策への提言」が取りまとめられたことを受けて、中央防災主事会議において、「火山災害応急対策対処方針」がとりまとめられた。
さらに、平成26年10月には、同年9月27日に発生した御嶽山の火山災害を踏まえ、関係府省庁において、「火山噴火に関して緊急的に行う主な被害防止対策」が取りまとめられ、常時観測47火山全てにおける火山防災協議会の設置完了、登山者や旅行者等に対する適切な情報提供と安全対策、火山観測体制の強化等などについて取り組むものとしている。

(2) 地方公共団体における火山災害対策

ア 近隣地方公共団体や関係機関との連絡・協力体制の整備

火山の周辺にある地方公共団体では、整合性の取れた避難対策及び登山規制の実施等のため、広域的な連絡・協力体制が整備される必要がある。平成26年3月現在、33火山で火山防災協議会が設置され、情報共有、避難の対応等についての検討・調整等の連携体制が整備されている。
また、火山災害時に応急対策を迅速かつ的確に実施するため、火山周辺の地方公共団体においては、火山防災協議会等の場を通して、火山観測を行っている気象台、砂防部局、火山専門家のほか、警察、消防機関、自衛隊、海上保安庁等との連携が図られている。

イ 火山防災マップの作成、提供

火山が噴火した際にどの地域にどのような危険が及ぶのかを示した火山ハザードマップを火山防災協議会等において作成することは、協議会における避難計画の検討に資するものである。また、火山ハザードマップをもとに、噴火警報等の解説や避難計画の内容、住民への情報伝達の方法等を記載した火山防災マップを作成し、地域住民に配布することを通じて、防災情報を積極的に提供することが、平常時から住民に対して、防災意識の高揚を図ることにつながる。平成26年3月現在、全国の37火山において火山ハザードマップが作成されている。
消防庁では、有珠山の噴火や三宅島の火山活動を踏まえ、火山周辺の地方公共団体に対してハザードマップの作成を要請するとともに、平常時から住民に対して防災情報を積極的に提供し、防災意識の高揚を図る必要性を示している。

ウ 火山防災に関する計画の整備

火山の周辺にある地方公共団体では、火山の特性、地理的条件及び社会的条件を勘案して、噴火警戒レベルに応じた防災対応等、火山防災に関する計画を地域防災計画の中に整備することが重要である。平成26年4月1日現在、都道府県で19団体、市町村で178団体が地域防災計画の中で火山災害対策計画を別冊又は独立した編、章として整備しており、最新資料の活用による計画の見直しも適宜行われている。

エ 実践的な防災訓練の実施

火山の周辺にある地方公共団体では、消防機関をはじめとする防災関係機関との密接な連携の下、定期的に実践的な防災訓練が行われ、平成25年度は火山災害を想定した防災訓練が都道府県5団体で延べ7回、市町村では延べ31回実施されている。なお、その際には、関係地方公共団体による合同訓練も実施されている。

オ 住民や観光客への情報伝達体制の整備

噴火警報や、避難勧告、避難指示等の災害情報を確実かつ迅速に住民に伝達するためには、防災行政無線(同報系)の整備が非常に有効である。火山地域の市町村における防災行政無線(同報系)の整備率は、78.3%(平成26年3月31日現在)である。
また、観光客、登山者の立入りが多い火山にあっては、火山活動の状況に応じて発表される噴火警報に基づいて、登山規制、立入規制等の措置が取られ、観光客等への周知が図られている。

関連リンク

平成26年版 消防白書(PDF版)
平成26年版 消防白書(PDF版) 平成26年版 消防白書  はじめに 今後発生が予測される大規模災害への対応と消防防災体制の強化 ~東日本大震災の教訓を生かす~  特集1 緊急消防援助隊の機能強化  特集2 消防団等地域防災力の充実強化  特集3 最近の大規...
はじめに 今後発生が予測される大規模災害への対応と消防防災体制の強化 ~東日本大震災の教訓を生かす~
はじめに 今後発生が予測される大規模災害への対応と消防防災体制の強化 ~東日本大震災の教訓を生かす~ 平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、死者・行方不明者が約2万名、住家における全壊が約13万棟、半壊が約27万棟に被害が及び、それは戦後最大の自然災害の脅威とも呼べるものであった(1表)。...
特集1 緊急消防援助隊の機能強化
特集1 緊急消防援助隊の機能強化 東日本大震災では、発災日から88日間にわたり、延べ約3万1,000隊、約11万人の緊急消防援助隊が消防・救助活動に尽力し、5,064人の人命を救助した。 南海トラフでは、過去100年から150年程度の周期でマグニチュード8クラスの海溝型地震が発生しており、東海、東南...
1.南海トラフ地震、首都直下地震等に備えた大幅増隊
1.南海トラフ地震、首都直下地震等に備えた大幅増隊 東日本大震災を上回る被害が想定される南海トラフ地震等に備え、大規模かつ迅速な部隊投入のための体制整備が不可欠であることから、平成30年度末までの目標登録隊数をおおむね4,500隊規模からおおむね6,000隊規模に増強することとしている(特集1-1表...