平成26年版 消防白書

3.関係機関の取組

(1) 消防庁の取組

ア 広域化の検討に対する支援

消防庁では、基本指針の策定と合わせ、都道府県及び市町村における広域化の取組を支援するために、消防庁長官を本部長とする消防広域化推進本部を設置して広域化を推進しているところであり、消防広域化推進アドバイザー*2の派遣や、消防広域化セミナーの開催等を行っている。
平成21年度には、広域化の取組の円滑化や推進策の検討を行うとともに、広域化後の消防防災体制において想定される課題の抽出と対応策の検討を行うため、「消防の広域化を踏まえた消防のあり方検討会」を開催し、報告書を取りまとめた。

*2 消防広域化推進アドバイザー:既に広域化を実現した消防本部の職員や、現在広域化に向けた検討を行っている協議会の職員など、広域化の推進に必要な知識・経験を持つ者の中から、消防庁が選定し登録する。都道府県等の要望に応じて派遣され支援活動を行う。

イ 財政支援

市町村の消防の広域化に伴って必要となる経費に対して、その運営に支障の生じることがないよう、必要な財政措置を講じている。
そのうち、広域消防運営計画等に基づき必要となる消防署所等の増改築及び再配置が必要と位置づけられた消防署所等の新築、国の周波数再編に伴い平成28年度までに完了する高機能消防指令センターで複数の消防本部が共同で整備するもの又は市町村の消防の広域化に伴い整備するもの、並びに広域消防運営計画等に基づく消防本部の統合による効率化等により、機能強化を図る消防車両等の整備について、事業費の100%に緊急防災・減災事業債を充当し、元利償還金の70%に相当する額を、後年度、普通交付税の基準財政需要額に算入することとしている(第2-2-5図)。

2-2-5a.gif

(2) 都道府県の取組

ア 推進計画の概要

基本指針では、都道府県は、当該都道府県の区域内において自主的な市町村の消防の広域化を推進する必要があると認める場合には、その市町村を対象として、自主的な市町村の消防の広域化の推進及び広域化後の消防の円滑な運営の確保に関して、推進計画を定めるよう努めなくてはならないこととされており、平成26年4月現在、45の都道府県で推進計画が策定されている。

イ 都道府県の支援策

都道府県によっては、独自の広域化支援方策を講じている例があり、財政支援としては、広域化協議会運営費や広域化に伴う施設整備を対象とした補助制度の創設等が、その他の支援策として、協議会事務局への県職員の派遣や協議会事務局スペースの貸与等が行われている。

(3) 市町村の取組

都道府県の推進計画に定められた広域化対象市町村は、消防の広域化を行う際には、協議により、広域化後の消防の円滑な運営を確保するための広域消防運営計画を作成することとされている(消防組織法第34条第1項)。
広域化に向けた検討を行っている多くの市町村は、市町村部局、消防本部、構成議会議員等から構成される協議会等の検討組織を設置し、〔1〕広域化後の消防の円滑な運営を確保するための基本方針、〔2〕消防本部の位置及び名称、〔3〕市町村の防災に係る関係機関相互間の連携の確保に関する事項のほか、〔4〕構成市町村の負担金割合方式、職員の任用方式や給与の統一方法等、広域消防運営計画や組合規約等の作成に必要な事項を中心に協議を重ねている。

(4) 平成25年度以降の取組

消防庁長官の諮問機関である消防審議会に対し、「消防の広域的な対応のあり方について」諮問を行い、平成24年9月7日になされた中間答申を踏まえ、平成25年4月1日に以下のとおり基本指針を改正した(第2-2-6図)。

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ア 市町村の消防の広域化の規模

改正前の基本指針では、管轄人口30万以上の規模を一つの目標とすることが適当であるとされていた。しかし、地域の実情により広域化のメリットや必要性等は異なるものと考えられることから、今後、広域化を通じた消防防災体制の強化を図るためには、管轄人口30万以上という規模目標には必ずしもとらわれず、地域の事情を十分に考慮する必要があるとした。

イ 消防広域化重点地域の創設

国の施策や各都道府県における措置を他の広域化対象市町村よりも先行して集中的に実施することにより広域化対象市町村の組合せにおける自主的な市町村の消防の広域化を着実に推進するために、消防広域化重点地域の枠組みを設けた。消防広域化重点地域の指定は、市町村の消防の現況及び将来の見通し、市町村の意見その他地域の実情を勘案して都道府県知事がその判断により行うものであり、次に該当すると当該都道府県知事が認めるものを消防広域化重点地域として指定することができるとした。

  • 今後、十分な消防防災体制が確保できないおそれがある市町村を含む地域
  • 広域化の気運が高い地域

(5) 消防吏員の階級の基準の一部改正

消防吏員の階級の基準(昭和37年消防庁告示第6号)第2条第2号において、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項に規定する指定都市(指定都市の加入する組合を含む。)の消防長は消防司監の階級を用いることができるとしていたが、広域化により指定都市と同等以上の規模を備える消防本部が新設されることから、平成25年4月1日に消防吏員の階級の基準を改正し、管轄人口70万以上の市町村(消防の事務を処理する一部事務組合等を含む。)の消防長についても消防司監の階級を用いることができることとした。

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