平成26年版 消防白書

4.広域化の進捗状況

(1) これまでの広域化実績

平成18年の消防組織法の一部改正以降、平成26年4月1日までに、34の地域で広域化が実現し、平成18年4月に811あった消防本部数は752となった。このうち、例えば、平成26年4月1日には管轄人口が約90万の奈良県広域消防組合消防本部が誕生した(第2-2-7図)。

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(2) 今後の広域化見込み

11の地域において、広域化の期日を明らかにして検討が行われている。

消防指令業務の共同運用について

1 「消防指令業務の共同運用」(以下、「指令の共同運用」という。)とは、複数の消防本部における消防指令業務(通報受付業務や部隊運用管理等)を1か所の消防指令センターにおいて共同で運用するものである。消防指令業務は、消防本部が単独で整備し運用することが原則とされてきたところであるが、近年、より高度な消防サービスに対するニーズを踏まえ指令の共同運用が検討され、導入が進められている。消防庁においても指令の共同運用の有効性を認めてその推進を図っている。指令の共同運用のメリットや課題、実施状況等は以下のとおりである(第2-2-8図)。

2-2-8a.gif

* 消防指令業務
消防指令センター等において、24時間体制で119番通報を受信し、通話内容等から災害発生地点や災害種別を決定、出動部隊を編成し、消防隊・救急隊等への出動指令、現場活動の支援等を実施する業務

(1) メリットと課題

指令の共同運用のメリットとしては、〔1〕情報の一元化による迅速な相互応援体制が可能になること、〔2〕高機能な消防通信指令システムの整備が図りやすいこと、〔3〕指令業務配置職員の効率配置により現場配置職員の充実を図れること、〔4〕施設整備費や維持管理費を効率化できることなどが挙げられる。
加えて、〔1〕指令センターの更新時期が近い消防本部間で財政面のメリットが大きいこと、〔2〕消防・救急無線のデジタル化の枠組みを活用できる可能性があること、〔3〕指令の共同運用は消防事務の一部の共同処理であり広域化と比較すると組織間における調整事項が少ないこと等の利点があるため、消防本部の検討が進んでいるものと考えられる。
一方、課題としては、〔1〕小規模の共同運用では指令業務配置職員の効率配置による効果がでないこと、〔2〕各消防本部の部隊運用方式が異なるためこれを補完する工夫が必要になること、〔3〕各消防本部で異なる勤務体制を統一する必要があること、〔4〕職員の通勤距離が増すことなどが指摘されている。

(2) 実施状況と今後の実施見込み

指令の共同運用に関する全国の検討状況をみると、指令の共同運用の検討地域は、広域化対象市町村の組合せ(ブロック)とは異なる場合が多くなっている。
指令の共同運用は、平成26年4月1日現在、既に25地域(95消防本部)で実施中であるが、さらに30地域(132消防本部、12非常備町村)で運用開始時期を明示して検討中であり、これらの地域においても、中長期的には広域化をする可能性があると考えられる。

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