平成26年版 消防白書

第8節 広域消防応援と緊急消防援助隊

1.消防の広域応援体制

(1) 消防の相互応援協定

市町村は、消防に関し必要に応じて相互に応援すべき努力義務があるため(消防組織法第39条第1項)、消防の相互応援に関して協定を締結するなどして、大規模災害や特殊災害などに適切に対応できるようにしている。
平成26年4月1日現在、消防相互応援協定の締結数は、同一都道府県内の市町村間では1,602、異なる都道府県域に含まれる市町村間では603であり、全国の合計は2,205である。
現在、すべての都道府県において、各都道府県下の全市町村及び消防の一部事務組合等が参加した消防相互応援協定(常備化市町村のみを対象とした協定を含む。)が締結されている。
さらに、地方公共団体間だけでなく、高速道路(名神高速道路消防応援協定ほか)、港湾(東京湾消防相互応援協定ほか)及び空港(大阪国際空港消防相互応援協定ほか)との相互応援協定を締結する動きも活発になっている。

(2) 消防広域応援体制の整備

大規模災害や特殊災害などに対応するためには、市町村又は都道府県の区域を越えて消防力の広域的な運用を図る必要がある。
このため、消防庁では、2に述べる緊急消防援助隊の充実強化を図るとともに、大規模・特殊災害や林野火災等において、空中消火や救助活動、救急活動、情報収集、緊急輸送など消防防災活動全般にわたりヘリコプターの活用が極めて有効であることから、効率的な運用を実施するため「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」を策定して、消防組織法第44条の規定に基づく応援要請の手続の明確化等を図り、消防機関及び都道府県の保有する消防防災ヘリコプターによる広域応援の積極的な活用を推進している(第2-8-1表)。

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平成26年2月には、西日本から北日本の広い範囲で雪が降り、特に関東甲信地方では大雪となった。山梨県甲府市をはじめ同県内の複数の市町村では孤立地域における救助・救急等の案件が多数あり、消防組織法第44条の規定に基づく消防庁長官の求めにより、横浜市消防航空隊、長野県消防防災航空隊及び静岡県消防防災航空隊が出動し、8日間にわたり救助、救急、情報収集、物資輸送等の活動を実施した。
また、本年は乾燥気象が続き大規模な林野火災が連続し、同年3月から6月にかけて発生した林野火災19件(昨年の同時期:15件)に対し、広域航空消防応援を実施した。中でも、同年4月に群馬県桐生市において発生した林野火災は、栃木県足利市へも延焼拡大し焼損面積は260ヘクタールという大規模なものとなり、群馬県防災航空隊並びに消防組織法第44条の規定に基づく消防庁長官の求めにより、埼玉県防災航空隊、栃木県防災航空隊、山梨県消防防災航空隊、茨城県防災航空隊、福島県消防防災航空隊及び新潟県消防防災航空隊が出動し、自衛隊ヘリ及び県警ヘリと連携し、4日間にわたって空中消火活動を実施した。これらの林野火災を受けて、消防庁では「林野火災に対する空中消火の積極的な活用について」(平成26年5月16日付け消防特第90号、消防広第117号)を各消防本部に通知し、都道府県管轄内の消防防災ヘリコプターだけでは対応できない場合には、より迅速に他の都道府県の消防防災ヘリコプターの応援要請を求めるとともに、自衛隊ヘリコプターの派遣要請についても時機を逸することなく要請を行うなど、ヘリコプターを大量投入して、被害拡大防止体制をより早期に確立する要請スキームを明確化した。
今後とも、消防防災ヘリコプターの広域的かつ効果的な活用を行うため、各都道府県災害対策本部への航空運用調整班の設置並びに迅速な情報収集活動を行うためのヘリサットシステム、ヘリコプターテレビ電送システム、消防防災ヘリコプターの位置情報の把握及び効率的な運用調整を行うためのヘリコプター動態管理システムの整備を推進し、全国的な広域航空消防応受援体制の更なる充実強化を図る必要がある。

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