平成27年版 消防白書

第5節 風水害対策

[風水害の現況と最近の動向]

1.平成26年中の主な風水害

平成26年中の風水害による人的被害は、死者107人(前年70人)、行方不明者2人(同7人)、負傷者460人(同620人)、住家被害は、全壊263棟(同252棟)、半壊966棟(同2,218棟)、一部破損3,245棟(同7,768棟)となっている(第1-5-1表)(第1-5-1図)。

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また、平成26年中に発生した台風の数は、平年より少ない23個(平年値25.6個)であり、このうち、日本列島へ上陸した台風の数は4個(同2.7個)で平年を上回った。
平成26年中の主な風水害については以下のとおり(第1-5-2表)。

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7月4日にマリアナ諸島付近で発生した台風第8号は、発達しながら日本の南海上を北上し、7月8日には大型で非常に強い勢力を保ったまま沖縄本島と宮古島の間を通過した後、九州の西海上で進路を東寄りに変え、10日の7時前に鹿児島県阿久根市付近に上陸後、そのまま九州を通過し、本州の太平洋沿岸を東に進んだ。
気象庁は、台風第8号の接近に伴い、記録的な暴風や高波、高潮、大雨が予想されたため、7日から9日にかけて沖縄県宮古島地方と沖縄本島地方に暴風、波浪、高潮、大雨の特別警報を発表し、最大級の警戒を呼び掛けた。
この台風の接近・通過に伴い、沖縄本島地方では記録的な大雨になったほか、台風周辺の湿った南風と梅雨前線の影響で、台風から離れた地域でも局地的に猛烈な雨が降り、浸水被害や土砂災害による被害が発生した。7月9日には長野県南木曽町読書にある木曽川支流の梨子沢で土石流が発生し、12歳の男子1人が死亡するなどの被害が発生した。
台風第8号等による人的被害は死者3人(福島県1人、長野県1人、愛媛県1人)、負傷者67人となっているほか、土砂災害による住家や道路の被害、浸水被害が多数発生した。
消防庁では、7月7日9時00分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置し情報収集体制の強化を図った。

7月29日にフィリピンの東の海上で発生した台風第12号は、勢力を強めて大型の台風となり、7月31日から8月1日にかけて南西諸島に接近し、沖縄本島の西側を抜けた後、8月1日には暴風域を伴いながら鹿児島県奄美群島の徳之島の西北西を通過した。また、7月29日にマリアナ諸島付近で発生した台風第11号は、比較的ゆっくりとした速度で北上し、8月10日6時過ぎ、強い勢力を保ったまま高知県安芸市付近に上陸した。その後、次第に速度を上げながら四国・近畿地方を通過し日本海を北上した。
台風第11号や台風第12号、高気圧の影響で南から暖かく湿った空気の流れ込みが継続し、全国各地で大雨となった。8月1日からの積算雨量は3日に高知県で1,000mm、徳島県で600mmを超え、西日本の太平洋側と東海地方を中心に1時間に80mm以上の猛烈な雨が降ったところがあった。 
この影響で、8月9日17時20分、三重県に対して大雨特別警報が発表され、約60万人を対象に避難指示が、約150万人を対象に避難勧告が発令された。
台風第12号及び台風第11号による人的被害は死者6人(愛知県1人、和歌山県1人、島根県1人、山口県2人、徳島県1人)、負傷者92人となっているほか、土砂災害による住家や道路の被害、浸水被害が多数発生した。
消防庁では、8月3日11時00分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置し情報収集体制の強化を図った。

8月15日から18日にかけて、本州付近に前線が停滞し、前線に向かって南から暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、東日本と西日本では広い範囲で大気の状態が非常に不安定になった。このため、局地的に雷を伴って猛烈な雨が降り、京都府福知山市や岐阜県高山市等で48時間降水量が観測史上1位を更新する等、近畿、北陸、東海地方を中心に大雨となった。
その後も、前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、中国地方や九州北部地方を中心に大気の状態が非常に不安定となった。8月20日には、広島県で局地的に猛烈な雨が降り、広島市では大規模な土砂災害が発生した。
また、8月23日から24日にかけては、北海道利尻富士町及び礼文町で50年に一度の記録的な大雨となった。

ア 8月15日から8月26日にかけての大雨等による被害等の状況(イ 8月19日からの大雨等による広島県における被害等の状況を除く)

8月17日から18日にかけては、京都府福知山市や岐阜県高山市等で48時間降水量が観測史上1位を更新する等、近畿、北陸、東海地方を中心に記録的な大雨となり、石川県羽咋市及び兵庫県丹波市では、土砂災害が発生した。また、北海道礼文町では、8月23日から24日にかけて記録的大雨が降り、土砂災害が発生した。
8月15日から8月26日にかけての大雨等による人的被害は、死者8人(北海道2人、石川県1人、京都府2人、兵庫県2人、福岡県1人)、負傷者7人となっているほか、土砂災害による住家や道路の被害、浸水被害が多数発生した。
消防庁では、8月17日13時00分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置し情報収集体制の強化を図った。

イ 8月19日からの広島県における大雨等による被害等の状況

日本付近に前線が停滞し、暖かく非常に湿った空気が流れ込み、8月19日夜から20日明け方にかけて、広島市を中心に猛烈な雨となり、安佐北区三入では1時間降水量101.0mm、3時間降水量217.5mmを観測するなど観測史上最大の値を記録した。この影響により、広島市安佐北区、安佐南区等では8月20日未明に166箇所で土砂災害が発生し、多くの死者が出るなど甚大な被害となった。
8月20日12時30分、広島県知事から消防庁長官に対して緊急消防援助隊の派遣要請が行われ、消防庁では直ちに消防庁長官から、岡山県、鳥取県、高知県、大阪府に対して緊急消防援助隊の出動を要請した。その後、8月21日19時30分には、救助体制を強化するため、新たに消防庁長官から島根県、山口県、愛媛県に対して緊急消防援助隊の出動を要請し、8月20日から9月5日までの17日間で延べ694隊2,634人が救助活動等を行った。
広島市における土砂災害等による人的被害は、死者75人(広島市安佐南区69人(災害関連死1名含む)、安佐北区6人)、負傷者68人となっているほか、土砂災害による住家や道路等の被害が多数発生した。
なお、安佐北区では、消防職員1人が住宅崩壊現場で住民の救助活動中、再崩落した土砂に巻き込まれ死亡している。
消防庁では、8月20日4時30分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置し情報収集体制の強化を図るとともに、甚大な被害状況から、8時30分には国民保護・防災部長を長とする「消防庁災害対策本部(第2次応急体制)」に改組した。さらに、8月22日9時00分には、災害対策基本法第24条第1項に基づき、政府に「平成26年(2014年)8月豪雨非常災害対策本部」が設置されたことを受け、消防庁の体制を消防庁長官を長とする「消防庁災害対策本部(第3次応急体制)」に改組した。

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9月29日15時にトラック諸島近海で発生した台風第18号は、発達しながら日本の南海上を北西進し、大型で非常に強い勢力で南大東島の近海を通って九州の南海上に達した。その後、進路を北東に変え、強い勢力を維持したまま潮岬の南を通って、10月6日8時頃、静岡県浜松市付近に上陸した。台風と本州付近に停滞した前線の影響で、東日本の太平洋側を中心に大雨となった。また、沖縄・奄美と西日本・東日本の太平洋側を中心に暴風となり、猛烈なしけとなった。
この台風の影響で、静岡県では猛烈な雨が降ったところがあり、神奈川県や三重県でも非常に激しい雨が降り、約360万人以上を対象に避難指示・避難勧告が発令された。台風第18号による人的被害は、死者6人(茨城県2人、千葉県2人、神奈川県2人)、行方不明者1人(神奈川県)、負傷者72人となっているほか、土砂災害による住家や道路の被害、浸水被害が多数発生した。
消防庁では、10月5日12時00分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置し情報収集体制の強化を図った。

10月4日3時にマーシャル諸島付近で発生した台風第19号は、発達しながらフィリピンの東海上を西に進み、8日3時から21時にかけて勢力が最大(中心気圧900hPa)となった。フィリピンの東海上で進路を北に変えて沖縄の南海上を北上し、10月12日0時30分頃に大型で非常に強い勢力で沖縄本島付近を通過し、13日には東シナ海で進路を北東に変え、13日8時30分頃鹿児島県枕崎市付近、13日14時30分頃に高知県宿毛市付近、13日20時過ぎに大阪府泉佐野市付近にそれぞれ上陸した。
この台風により、沖縄・奄美と西日本から北日本にかけての太平洋側を中心に大雨や暴風となり、海上は猛烈なしけとなった。
台風第19号による人的被害は、死者3人(鳥取県1人、愛媛県2人)、負傷者96人となっているほか、土砂災害による住家や道路の被害、浸水被害が多数発生した。
消防庁では、10月11日17時00分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置し情報収集体制の強化を図った。

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