平成27年版 消防白書

2.政府の主な動き及び消防機関の活動

(1) 政府の主な動き

台風第18号が9月9日に日本列島に接近・上陸するおそれがあることから、官邸では同月8日に台風第18号に関する情報連絡室を設置した。
同月10日、気象庁が栃木県に対して大雨による特別警報を発表したことから、官邸連絡室に改組した。さらに、関係省庁局長級会議を開催し、応急対策の確認を行うとともに、官邸対策室に改組した。
総理からは、<1>被害状況の迅速な把握と災害応急対策に全力で取り組むこと、<2>国民に対し、情報提供を適時的確に行うこと、<3>避難支援等の対策に万全を期することの指示がなされ、また、気象庁が栃木県に続き茨城県に対しても大雨による特別警報を発表したことから、緊急参集チームを招集し総理指示事項に沿って協議・確認を行った。
その後、関係省庁災害対策会議、関係省庁局長級会議をそれぞれ開催するとともに、関係閣僚会議を開催し、総理からは、<1>被災者の救命・救助に全力を尽くすこと、<2>要救助者について早急に状況を把握すること、<3>住民の避難対策に万全を期すことの2回目の指示がなされ、関係省庁に伝達を行った。
翌11日に被害状況及び現地の対応状況等を把握するため、内閣府副大臣を団長とする政府調査団を茨城県及び栃木県に派遣し、被災自治体の首長と意見交換を行うとともに、被災現場の調査を実施した。
同日、関係閣僚会議を開催し、総理からは、<1>引き続き、被災者の救命・救助に全力を尽くすこと、<2>住民の避難対策に万全を期すこと、<3>必要な物資の確保や医療行為の提供等に取り組むことの3回目の指示がなされ、関係省庁災害対策会議を開催し、総理指示の伝達と各省庁が把握している災害の状況及び各省庁の対応について、情報の共有を行った。
翌12日に総理は台風第18号等による被害状況を視察するため、茨城県及び栃木県を訪問した。鬼怒川周辺の被災現場の視察、避難所への訪問及び茨城県知事から被害状況の説明を受けた後、意見交換を行い、続いて、被災状況を上空から視察した後、栃木県庁を訪問し、知事から被害状況等の説明を受けた後、意見交換を行った。

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(2) 消防庁の対応

消防庁では、9月8日午後4時48分に応急対策室長を長とする「消防庁災害対策室(第1次応急体制)」を設置し、情報収集体制の強化を図るとともに、地方公共団体へは災害対応に万全を期するため、「台風第18号警戒情報」を発出した。
同月10日午前0時20分、気象庁から栃木県に大雨特別警報が発表されたことから、栃木県に対して、被害発生時には直ちに消防庁に被害状況を報告する旨を求めるとともに、引き続き情報収集を行った。
同日午前7時ごろ、国土交通省から鬼怒川で越水、漏水が発生したとの情報があり、被害が広範囲となり要救助者が多数発生することが予見されることから、消防庁では同日午前7時10分に国民保護・防災部長を長とする「消防庁災害対策本部(第2次応急体制)」に改組し、応急体制の強化を行った。
さらに、同日午前7時45分、気象庁から茨城県に大雨特別警報が発表されたことから、茨城県に対して、栃木県と同様に被害情報の報告を求めるとともに、情報収集体制を強化し情報収集を行った。
同日午前8時10分、東京都、群馬県、埼玉県及び千葉県に緊急消防援助隊の出動準備依頼を実施し、同日午前10時、栃木県及び茨城県に消防庁職員を各2人派遣した。
その後、同日午前11時10分、茨城県知事から消防組織法に基づき、緊急消防援助隊の応援要請を受け、消防庁長官が2都県(東京都、埼玉県)に、さらに、同日午後0時30分、2県(群馬県、山梨県)に対し、緊急消防援助隊の出動を求めた。同日午後1時8分、国土交通省から茨城県常総市の鬼怒川左岸で、堤防が決壊したとの情報があり、同日午後2時15分、消防庁長官を長とする「消防庁災害対策本部(第3次応急体制)」に改組し、消防庁の体制を強化した。
翌11日午前3時20分、気象庁から宮城県に大雨特別警報が発表されたことから、宮城県に対しても、茨城県、栃木県と同様に被害情報の報告を求めた。
また、同日午前4時45分、大雨特別警報が発表された宮城県知事からの応援要請を受け、消防庁職員を2人派遣するとともに、新潟県に対して、緊急消防援助隊の出動を求めた。その後、宮城県の被害が収束に向かい、茨城県の被害が拡大していることから、宮城県へ出場途上であった新潟県大隊の応援先を茨城県常総市に変更した。

(3) 消防機関の対応

ア 緊急消防援助隊

消防庁長官から出動の求めを受けた1都5県の緊急消防援助隊は、茨城県及び宮城県に向け、迅速に出動した。
宮城県に出動した新潟県大隊は、出動途上、宮城県の地元消防本部及び県内応援隊等で対応が可能であるとの連絡を受け、茨城県に移動した。茨城県では、常総市において浸水地域が広範囲に及び、地上からの救助が困難を極めていたことから、航空小隊及びボートを保有している救助小隊を中心とする編成とし、以下のとおり活動した(トピックス4-1表)。

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平成27年9月10日から9月17日まで(8日間)

572隊 2,246人(延べ人数)

93隊 359人(9月13日)

790人(うち、航空隊による救助 276人)

a 東京消防庁指揮支援隊は、発災後直ちに茨城県庁に設置された消防応援活動調整本部に参集し、茨城県、警察庁、防衛省、海上保安庁、DMAT、国土交通省及び気象庁等の関係機関と連携の上、被害情報の収集、緊急消防援助隊各隊の活動方針の調整等を行った。また、隊員の安全を確保するため、降雨に対する活動中止基準の作成、これらの基準に基づく判断等について、関係機関との検討・調整等を行った。
b さいたま市消防局指揮支援隊は、発災後直ちに常総地方広域市町村圏事務組合消防本部に参集し、指揮支援活動を開始した。9月11日未明、同消防本部庁舎の浸水の危険性が高まったため、指揮支援本部が同消防本部の守谷消防署へ移されたことにより、同署において、緊急消防援助隊各隊の活動内容等の決定及びその活動管理を行った。同月15日午後には、現地合同指揮所のある常総市役所において、市災害対策本部と連携を図り、自衛隊及び警察等、関係機関と救助活動等の調整を行った。
c 新潟市消防局指揮支援隊は、同月11日午後、常総地方広域市町村圏事務組合消防本部の守谷消防署へ参集したが、浸水していた常総市役所の環境が改善されたため、翌12日には、同市役所に設置された現地合同指揮所において、同月15日午後までの間、関係機関との活動調整を行った。
d 各都県大隊の陸上隊は、浸水地域に取り残された住民等の救助を行い、特に同月10日及び翌11日の2日間は24時間体制で救助活動を展開した。また、車両の進入や資機材の搬送が困難な浸水地域では、水陸両用バギーやボート、胴付長靴・ドライスーツを活用した活動を実施するとともに、住戸の戸別訪問による安否確認活動等を行った。
e 航空隊は、地元航空隊をはじめ、自衛隊、警察及び海上保安庁等と連携し、住宅に孤立した住民の救助活動を行うとともに、上空からの被害情報の収集等を実施した。同月10日から12日の3日間で276人を救助した。

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イ 茨城県広域消防相互応援協定に基づく応援

平成27年9月10日午後2時に、常総市長から茨城県を通じて茨城県広域消防相互応援協定に基づく応援要請を受け、茨城県内22消防本部から合計123隊496人が出動した。活動概要は以下とおり。

平成27年9月10日から9月17日まで(8日間)

123隊 496人(延べ人数)

37隊 149人(9月11日)

茨城県広域消防相互応援隊は、災害現場において地元消防本部及び緊急消防援助隊とともに、要救助者の救助活動及び救急活動等を実施した。
また、緊急消防援助隊の受入れや宿営場所の確保等、取手市消防本部を中心に県内消防本部が協力して後方支援活動の調整を行った。

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ウ 地元消防機関

常総市を管轄する常総地方広域市町村圏事務組合消防本部及び茨城西南地方広域市町村圏事務組合消防本部は、災害発生後直ちに被害情報を収集するとともに、地元消防団、県内広域消防相互応援隊及び緊急消防援助隊と連携した要救助者の救助活動等を実施した。
また、茨城県災害対策本部及び常総市災害対策本部に職員を派遣し、情報収集活動及び緊急消防援助隊をはじめとした関係機関に対する情報提供等の活動を実施した。
なお、緊急消防援助隊を含めた消防機関の活動により1,746人を救助した。

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