平成27年版 消防白書

2.火災原因調査等及び災害・事故への対応

(1) 火災原因調査及び危険物流出等の事故原因調査等

ア 火災原因調査及び危険物流出等の事故原因調査等の実施

消防防災の科学技術に関する専門的知見及び試験研究施設を有する消防研究センターは、消防庁長官の火災原因調査及び危険物流出等の事故原因調査(消防法第35条の3の2及び第16条の3の2)を実施することとされており、大規模あるいは特異な火災・危険物流出等の事故を中心に、全国各地においてその原因調査を実施している。また、消防本部への技術支援として、原因究明のための鑑識*1、鑑定*2、現地調査を消防本部の依頼を受け共同で実施している。
平成26年度及び平成27年度に実施した火災原因調査等は第6-3表のとおりである。また、平成26年度に行った鑑識は86件、鑑定は48件である。

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主な原因調査は次のとおりである。
平成26年5月に兵庫県の姫路市沖で発生した船舶火災(死者1名、負傷者4名)においては、消防本部からの要請を受けて、現場調査の技術的支援を行った。
平成26年9月に愛知県内の製鐵所で発生した石炭棟の爆発火災(負傷者15名)においては、消防庁長官の自らの判断による火災原因調査を行った。
平成27年5月に神奈川県内の簡易宿泊所で発生した火災(死者11名、負傷者17名)においては、消防庁長官の自らの判断による火災原因調査を行った。

*1 鑑識:火災の原因判定のため具体的な事実関係を明らかにすること
*2 鑑定:科学的手法により、必要な試験及び実験を行い、火災の原因判定のための資料を得ること

イ 火災原因調査及び危険物流出等の事故原因調査の高度化に向けた取組

近年の火災・爆発事故は、グループホームや個室ビデオ店のような新しい使用形態の施設での火災やごみをリサイクルして燃料を製造する施設での火災、あるいは、機器の洗浄を行うなどの非定常作業時の火災、燃焼機器、自動車などの製品の火災など、複雑・多様化している。また、石油類等を貯蔵し、取り扱う危険物施設での危険物流出等の事故や火災発生件数は増加傾向にあり、危険物施設の安全対策上問題となっている。
このような火災・事故を詳細に調査し、原因を究明することは、火災・事故の予防対策を考える上で必要不可欠であり、そのためには、調査用資機材の高度化や科学技術の高度利用が必要である。
このため消防研究センターでは、走査型電子顕微鏡、デジタルマイクロスコープ、X線透過装置、ガスクロマトグラフ質量分析計、フーリエ変換型赤外分光光度計、X線回折装置などの調査用の分析機器をはじめとして、研究用の分析機器も含めて、観察する試料や状況に応じて使用する機器を選択し、火災や危険物流出等事故の原因調査を行っている。
また、消防法改正により、平成25年4月から、消防本部は火災の原因調査のため火災の原因であると疑われる製品の製造業者等に対して資料提出等を命ずることができることとなった。消防本部の依頼を受け消防研究センターで実施する鑑識・鑑定では、電気用品、燃焼機器、自動車などの製品に関するものが増えており、これらの火災原因調査に関する消防本部からの問い合わせにも随時対応しており、消防本部の火災原因調査の支援のため、設備や体制の整備を図っていくこととしている。消防研究センターでは、高度な分析機器を積載した機動鑑識車を整備しており、火災や危険物流出等事故の現場で迅速に高度な調査活動が行えるようにするとともに、鑑識・鑑定の支援においても活用している。

(2) 災害・事故への対応

消防研究センターでは、火災原因調査及び危険物流出等の事故原因調査に加え、災害・事故における消防活動において専門的知識が必要となった場合には、職員を現地に派遣し、必要に応じて助言を行うなど消防活動に対する技術的支援も行っている。また、消防防災の施策や研究開発の実施・推進にとって重要な災害・事故が発生した際にも、現地に職員を派遣するなどして、被害調査や情報収集などを行っている。
災害・事故における消防活動に対する技術的支援としては次のようなものを実施している。
平成26年8月に広島県広島市で発生した土砂災害において、職員を現地に派遣し、上空からの斜面の状況を確認するなどして消防隊員の活動時の安全確認に関する技術的助言を行った。また、災害現場で使用されていた水陸両用バギーのパンク対策に係る助言を行った。
研究開発に係る災害・事故の調査としては、東日本大震災に関して、平成26年度においても継続的に現地調査を行っている。

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