平成27年版 消防白書

3.研究成果をより広く役立てるために

消防研究センターでは、研究開発によって得られた成果を、全国の消防職団員をはじめとする消防関係者はもとより、より広く利活用されるよう次の活動を行っている。

(1) 一般公開

毎年4月の「科学技術週間」にあわせて、消防研究センターの一般公開を実施している。平成27年度は4月17日に実施した。
一般公開では、実験施設等の公開、展示や実演による消防研究センターにおける研究開発等の紹介を行っている。平成27年度は、東日本大震災の課題を踏まえて取り組んでいる研究開発をはじめ、合計11(実演6、展示5)の公開項目を設けた。

(2) 全国消防技術者会議

全国の消防の技術者が消防防災の科学技術に関する調査研究、技術開発等の成果を発表するとともに、参加する他の発表者や聴講者と討論を行う場として昭和28年(1953年)から「全国消防技術者会議」を毎年開催している。62回目となる平成26年度の会議は、11月20日及び21日の2日間、都内で開催した。
今回は初めての試みとして、近年、実施体制等が課題となっている火災原因調査を特集する形で、1日目に「消防防災研究講演会」を、2日目に「全国調査技術会議」を開催する構成とした。また、併せて「平成26年度消防防災科学技術賞」の表彰式及び受賞作品の発表を行った。

(3) 消防防災研究講演会

消防研究センターの研究成果の発表及び消防関係者や消防防災分野の技術者や研究者との意見交換を行うため、平成9年度(1997年度)から「消防防災研究講演会」を開催している。この講演会では毎年特定のテーマを設けており、18回目となる平成26年度の講演会は「火災原因調査の取り組みと調査技術の高度化」をテーマとして、平成26年11月20日に全国消防技術者会議の中で開催した。

(4) 調査技術会議

消防研究センターでは、消防本部が行った火災及び危険物流出等事故に関する事故事例や最新の調査技術を互いに発表する「調査技術会議」を開催している。この会議は、調査技術や行政反映方策に関する情報を共有して消防本部の火災調査及び危険物流出等事故調査に関する実務能力を全国的に向上させることを目的としており、会議で発表された調査事例は、年度末に取りまとめてすべての消防本部に配付し、情報共有を図っている。この会議は、年間5回程度開催している。平成26年度は、東京、札幌、名古屋、仙台、大阪、北九州の6都市で開催し、火災事例発表が計36件、危険物流出等事故事例発表が計6件行われた。

(5) 消防防災科学技術賞(消防防災機器等の開発・改良、消防防災科学論文及び原因調査事例報告に関する表彰)

消防防災科学技術の高度化と消防防災活動の活性化に寄与することを目的として、消防職団員や一般の方による消防防災機器等の開発・改良及び消防防災に関する研究成果のうち特に優れたものを消防庁長官が表彰する制度を平成9年度(1997年度)から実施している。平成21年度から、従来の募集に加えて、優秀な原因調査事例についても表彰の対象として募集を行っている。また、平成26年度から制度名が、「消防防災機器等の開発・改良、消防防災科学論文及び原因調査事例報告に関する表彰」から「消防防災科学技術賞」へ変更された。
平成26年度は72作品の応募があり、選考委員会による選考の結果、27の受賞作品(優秀賞24編、奨励賞3編)が決定され、11月20日の全国消防技術者会議の中で、表彰式及び受賞者による受賞作品の発表が行われた。

(6) 施設見学

消防研究センターでは、消防職団員や市町村の防災担当者に限らず、小中高の児童・生徒や大学生、自治会・防火協議会などの構成員など、多くの方に実験施設や研究成果を見学してもらっている。平成26年度は合計で52件1,800名の見学があった。

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