平成29年版 消防白書

4.消防大学校における教育訓練及び技術的援助

消防大学校は、国及び都道府県の消防事務に従事する職員又は市町村の消防職団員に対し、幹部として必要な高度な教育訓練を行うとともに、都道府県等の消防学校に対し、教育訓練に関する必要な技術的援助を行っている。

(1)施設・設備

消防大学校には、教育訓練施設として、本館、第2本館、訓練施設及び寄宿舎がある。
本館には、250人収容の大教室、3つの教室、視聴覚教室、理化学燃焼実験室、図書館のほか、様々な災害現場を模擬体験して指揮者としての状況判断能力や指揮能力を養成する災害対応訓練室等を設けている。
第2本館には、300人収容の講堂のほか、救急訓練室、特別教室、屋内訓練場等を設けている。
訓練施設には、スチームとスモークマシンを併用し、濃煙熱気の環境下での訓練が可能な屋内火災防御訓練棟及び地上11階の高層訓練塔に加え、コンテナ内で木材を燃やし、実際の火災現場と同様の環境の変化を体験することができる実火災体験型訓練施設を設けている。
寄宿舎には、172人収容の南寮と52人収容の北寮のほか、女性の寮生活に必要な浴室、トイレ、更衣室、談話室などの女性専用施設を設けている。
なお、教育訓練車両として、指揮隊車、普通ポンプ車、水槽付きポンプ車、救助工作車、特殊災害対応化学車、災害支援車及び高規格の救急自動車を保有している。

消防大学校本館の写真
消防大学校本館
複数課程で実施する多数傷病者対応訓練の写真
複数課程で実施する多数傷病者対応訓練
NBC災害対応訓練の写真
NBC災害対応訓練
実火災体験型訓練(危険物火災)の写真
実火災体験型訓練(危険物火災)

(2)教育訓練の実施状況

消防大学校では、平成28年度において、総合教育及び専科教育で1,087人、実務講習で595人の卒業生を送り出しており、卒業生数は、創設以来、平成28年度までで延べ5万9,183人となった。
また、平成29年度の定員は2,006人としている(第2-4-3表)。

第2-4-3表 教育訓練実施状況

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第2-4-3表 教育訓練実施状況の画像。詳細は、Excelファイル、CSVファイルに記載。

学科については、平成18年度に大幅な再編を実施し、その後も受講側のニーズ等を踏まえて適宜見直しを行った結果、平成28年度においては、年間に20の学科と11の実務講習を実施した。
各課程の教育訓練内容(授業科目)については、各学科等の目的に応じて社会情勢の変化に伴った新しい課題に対応するための科目として、ハラスメント対策、メンタルヘルス、惨事ストレス対策、危機管理、広報及び訴訟対応を取り入れるほか、情報システムを活用して、火災時指揮シミュレーション訓練、大規模地震の際の受援シミュレーション訓練などに加えて、実火災体験型訓練施設を活用した実際の火災に近い環境下での消防活動訓練(ホットトレーニング)などカリキュラムの内容の充実を図っている。
また、一部の課程では、インターネットを使った事前学習(e-ラーニング)を取り入れ、限られた期間内でより効率的な教育訓練が行えるようにしている。
平成28年度は、女性の研修機会の拡大を図るため、女性専用コースとして、女性消防吏員のキャリア形成の支援を主たる目的とした5日間の実務講習を実施した。
また、各学科の定員の5%を女性消防吏員の優先枠として設定し、女性の入校を推進している。
さらに、国際的な大規模イベント(2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会等)の開催に当たり、NBC災害対応力の強化に資するために、オリンピック開催年度の平成32年度まで、NBCコースの教育日数を10日間から15日間に増やして実施している。
平成29年度は、平成27年度に開催した「消防大学校における教育訓練等に関する検討会」において、現任の消防学校教官には、それに相応しい高度の知識及び能力の専門的な修得とともに、消防学校の教育訓練のあり方を見直していけるような能力を高めることが必要であるとされたことを踏まえ、業務運営の企画及び予防業務又は警防業務を包括的に指導できる能力を向上させることを目的とした学科を新設した。
また、女性消防吏員の研修機会の拡大として、女性専用コースの定員及び教育日数を増やして内容を充実させるほか、出前講座として実施している「消防大学校フォーラム」について、女性の活躍推進をテーマとした内容で実施することとしている。
このほか、消防本部の予防業務に携わる者を対象に、査察業務全般をマネジメントするために必要な知識及び能力を修得させることを目的とした実務講習を新設した。

(3)消防学校に対する技術的援助

自然災害や火災・事故等の態様の多様化・大規模化に伴い、都道府県の消防学校における教育訓練も充実強化が求められていることから、消防大学校では、次のような技術的援助を行っている。

ア 消防学校長・教官に対する教育訓練

新任の消防学校長及び教官に対して、それぞれ、新任消防長・学校長科及び新任教官科において教育訓練を行っている。
また、新任教官科及び現任教官科では、教育技法の習得を中心に教育を実施するとともに、実際に講義を行う演習を取り入れ、消防学校における教育指導者養成を行っている。
なお、新任教官科及び現任教官科以外の各学科においても、教育指導者養成を目的の一つとしており、教育技法の学習や講義演習を実施している。

イ 講師の派遣

消防学校における教育内容の充実のため、消防学校からの要請により、警防、予防、救急、救助等の消防行政・消防技術について講師の派遣を行っている。平成28年度は、延べ113回の講師の派遣を実施した。

ウ 消防教科書の編集

消防学校において使用する初任者用教科書の編集を行っており、平成29年4月現在21種類が発行されている。

エ 講師情報の提供等

消防学校で行う教育訓練において、専門分野に一定水準の知識・技術が担保された講師等を確保し、教育訓練の質の更なる向上に資するため、消防大学校卒業生名簿及び講師情報等を提供している。

(4)特別講習会

ラグビーワールドカップ2019及び2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控え、4か年で16か所の会場所在県において特別講習会を計画している。平成29年度は北海道、兵庫県、埼玉県及び福岡県の4か所で開催し、安全管理、多数傷病者対応、NBC対応等の講義を実施する。

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