4.各消防本部等において取り組むべきこと
以下、上記3の基本的な考え方に基づき、各消防本部等が取り組むべき主な事項について記載する。
(1)危険性が高い地域の確認・指定及び火災防ぎょ計画の策定
各消防本部において、自らの管轄区域における市街地構造を分析し、木造の建築物が密集した地域などの大規模な火災につながる危険性が高い地域を確認し、指定しておくことが必要である(以下、このように指定した地域を「指定地域」という。)。また、指定地域で実際に大規模火災が発生してしまった場合に対応するために、道路幅員や建築物の状況も踏まえて、消防ポンプ自動車の必要台数、使用する消防水利、車両の部署位置等を定める火災防ぎょ計画をあらかじめ策定しておくことが必要である。
このため、消防庁においては、確認・指定のための手順や基準を提示し、火災防ぎょ計画のひな形についても提示するとともに、先進事例の紹介を行った(「糸魚川市大規模火災を踏まえた危険区域の指定要領等について(通知)」(平成29年7月31日付け消防消第193号消防庁消防・救急課長通知)。特集2-3図)。さらには、各消防本部に対して、ブロック別の説明会も行った。
特集2-3図 地域の指定を行っている事例(平成29年7月31日付け消防・救急課長通知より)
箱根町消防本部(困難性を勘案している事例)
幅員6m以上の道路、空地、河川等に囲まれた地域を単位として、主要な進入路が狭隘又は急坂のため進入困難な地域で木造建築物が密集し包囲隊形のとれない地域を指定している。
岡崎市消防本部(定量的な指標を勘案している事例)
岡崎市災害危険度判定調査(平成27年3月岡崎市都市整備部都市計画課)を基に、危険性の高い区域を指定している。
(2)応援体制の見直し
各消防本部において、出動基準を踏まえた上で、出動させることができる人員、車両の状況、管内の火災発生地域以外の地域での警戒の必要性等を考慮して、消防団を含む消防力を最大限投入するとともに、応援要請の迅速化のため、応援要請を同時に行うことが必要である。
また、火災の発生場所、気象条件等により応援要請の要否を客観的に判断できるよう、応援要請の基準をあらかじめ定めておくことが必要である。
多数の消防本部に応援要請を行う必要がある場合は、一の消防本部に対して応援要請を行い、その要請を受けた消防本部が他の消防本部への応援要請を代行するなどの体制を隣接消防本部等とあらかじめ構築しておくことが必要である。
小規模な消防本部では、消火活動に集中し、応援の要請ができないおそれがあることから、隣接消防本部等との間で火災の状況を常時共有できる体制を構築し、被害が大きいと予想される場合は応援要請を待たずに出動することを、あらかじめ当事者間で取り決めておくことが必要である。
応援を行う隣接消防本部においては、火災が発生した消防本部と気象条件が類似している可能性が高く、応援隊数が限定的になるおそれがあることから、隣接消防本部においては、管内で必要な消防力を維持するために、予備車の活用、消防団員の参集体制等についてあらかじめ計画を策定しておくことが必要である。
消防庁においては、上記のような応援体制の先進事例の紹介などの応援体制を見直すための方策を提示したところである(「糸魚川市大規模火災を踏まえた消防広域応援体制の強化について(通知)」(平成29年7月31日付け消防広第266号消防庁広域応援室長通知)。特集2-4図)。
特集2-4図 火災の状況を共有する体制の構築事例(平成29年7月31日付け広域応援室長通知より)
埼玉県の消防本部
埼玉西部消防局、入間東部地区消防組合消防本部等の埼玉県第2ブロックに属する7消防本部で、常時互いの消防救急無線の通話内容を受信し火災の発生状況や活動の状況を共有している。
(3)消防水利の確保
各消防本部において、火災防ぎょ計画の策定に当たって、上記4(1)で述べたとおり指定地域において使用する消防水利を定めるほか、大型の水槽付き消防ポンプ自動車*1による給水、消防団による給水等に加え、小型動力ポンプ付き水槽車*2等による他の消防本部からの応援及び国土交通省の排水ポンプ車、民間事業者のコンクリートミキサー車等による支援等についても定めることが必要である。また、上記のような支援等を受けるに当たって、協定をあらかじめ締結しておくことが必要である。
消防庁においては、協定締結の先進事例の紹介等を行った(「大規模火災発生時の消防水利確保に関する関係機関等との協定等の締結について(通知)」(平成29年8月18日付け消防消第194号消防庁消防・救急課長通知)。特集2-5図)。
特集2-5図 民間との水利に関する協定締結の事例(平成29年8月18日付け消防・救急課長通知より)
高知県における事例
以下のとおり、高知県と高知県生コンクリート協同組合連合会が協定を締結している。
【目的】
- 山林火災などの水利の悪い場所での消火用水の確保
- 地震等により消火栓が使用できなくなった場合の消火用水の確保
【内容】
- 要請方法、経費負担、損害の負担、訓練の実施等

また、延焼が長期化した場合等には、海、河川などの自然水利からの大量送水も必要となることから、地域の実情を踏まえつつ、スーパーポンパー*3等を整備することが必要である。消防庁においては、スーパーポンパーについて、緊急防災・減災事業債や緊急消防援助隊設備整備費補助金の対象とすることで各消防本部に対する財政支援を行っている。
*1 消火栓などの水利によらなくても、放水ができる消防車
*2 他の消防車に水を補給することができる消防車。小型ポンプを搭載しているため、放水もできる。
*3 海、河川などの自然水利から遠距離大量放水ができる消防車
(4)小規模飲食店への消火器設置の義務化
延べ面積150m²未満の飲食店にあっては、一部の地方公共団体の火災予防条例により消火器の設置が義務付けられているものの、全国的には義務付けられていない。
したがって、消防庁において、飲食店のこんろ火災の危険性に鑑み、消防法施行令を改正し、こうした飲食店にも消火器の設置を義務付ける方向で検討している。
(5)連動型住宅用火災警報器
消防庁において、飲食店で火災が発生した場合に、早期に覚知して近隣住民が協力して初期消火等を行うことができるように、住宅用火災警報器を活用した、小規模飲食店等を含む隣接した建築物間で相互に火災警報を伝達する新たな方式についてのモデル事業を行っているところである。
(6)消防団の安全管理の再徹底
指定地域において強風下で消火活動を行う場合、煙や飛散物により目を負傷する危険性が高いため、各市町村等において、消防団員に対してシールド付き防火帽などの必要な安全装備の充実、正しい着装の徹底等により、安全管理を徹底することが必要である。
特集2-6図 糸魚川市大規模火災を踏まえた対応策
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